当て馬基質 52 ページ7
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「 ちょ、坂田…!! 」
いきなり握られた手を引っ込めようとするも、男の力になんか勝てるわけがなく。む、と顔を顰めて坂田は私の手を強く握り直す。
「 …センラの時は逃げなかったのに 」
「 はい? 」
「 センラに手を握られた時は逃げてなかったのに、なんで俺からは逃げるん 」
「 それは色々状況が違うでしょ… 」
「 違くない! 」
我儘っ子坂田が炸裂し始めたのか、絶対に離してやらないと言いたげに私の手をぎゅう、と握り締める坂田。
その言葉も行動も、一体何を考えてのものなのかなんて私には1ミリも想像がつかなくて。想像してしまえばそれは、私の都合の良いそれになってしまいそうで、期待してしまうのが怖くて。
ーーーー考えるのを放棄して、久しぶりに感じる坂田の温もりに甘えてみようか、なんて思ってしまったり。
「 …分かった。はぐれたらやばいし 握ってて 」
「 …うん 」
「 じゃあ、布とペンキとハケ、探しに行こ 」
「 うん 」
高校生にもなって、はぐれたら困るからなんて理由で手を繋いで店に入る幼馴染みだなんているのだろうか、なんて愚問を考えながら私は店に足を踏み入れる。
広い割に、色々な商品がずらりと並んでいるこの店はなんとなく狭いような気がして、その上 人で込み合っているのだから 満員電車にいるような感覚に陥る。
そんな中でも、繋がれている…というより、一方的に握られているその手は一向に離れる様子がなく。私が人に巻き込まれそうになったら 優しく手を引いてくれたり、人にぶつからないようにそっと護ってくれたり。
いつもいつも、振り向かずに突っ走るタイプの坂田が こんなにも私を気にする、だなんてこと珍しいなと 思ったと同時に、なんとなく。
( ーーセンラ、っぽいなあ なんて坂田に失礼だろうか。)
遊園地の時に 私をエスコートしてくれたセンラが坂田に被って。…あれ、坂田がセンラに被るとか何気に初?いやまぁ、この二人似てないし それだけ?ーーーーそれとも。私はもしかして、センラに揺れてるとか、そういうこと?
いつもと少しだけ違う坂田に動揺を覚えてはそんなことを考えて。それから、私に見せてなかっただけで、他の女子には坂田はこんな感じだったのかなって少し寂しくなったり。
私と坂田の二人の買い出しは、こんなぐちゃぐちゃな感情のままゆったりと続いていった。
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零生(プロフ) - ルテメナさん» ありがとうございます〜!私も自分で作り出したオリジナルキャラでみやのんはトップレベルで好きなので嬉しいです! (2019年4月5日 22時) (レス) id: c45c7990b9 (このIDを非表示/違反報告)
ルテメナ - 少し遅れましたが、完結おめでとうございます。お疲れ様でした!もうちょっと早くこの作品を知りたかったですw なんというか、みやのん大好き。(え) (2019年4月5日 22時) (レス) id: 725488054e (このIDを非表示/違反報告)
零生(プロフ) - キャンディットさん» キャンディットさん! いつもコメントありがとうございました!! 更新の力にさせてもらっておりました。私も大好きです! 本当にありがとうございます!! (2018年12月28日 20時) (レス) id: c45c7990b9 (このIDを非表示/違反報告)
キャンディット(プロフ) - すごく、すごく良かったです!!もう高評価1つじゃ足りない…。完結おめでとうございます!!零生さん好きです!!(?) (2018年12月28日 18時) (レス) id: 8583ad440a (このIDを非表示/違反報告)
零生(プロフ) - もかさん» 長い間のお付き合いありがとうございました!私も書いていて、幸せになってよかった〜と思っております笑 他の作品も頑張りますので、良かったら覗いてやってください! (2018年12月27日 16時) (レス) id: c45c7990b9 (このIDを非表示/違反報告)
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