当て馬基質 51 ページ6
.
学校から買い出しの場所まではそう遠くなく、歩いて10分もかからないところなのだけど、問題はその店がとてつもなく広いということで。
私も坂田もさしてその店には行かないし、もし行くとしても 近所の駄菓子屋なんて感じだったから 慣れていないのだ。すなわちそれは、どこに何があるか把握していない、という事になり、それはつまり…ーー坂田と二人の買い物時間が長くなる、訳だ 。
( ーーいや無理 早々に帰りたい )
歩いて数分、店につく前からして そう考えている私は 夏のギラギラとした陽に照らされながら坂田の数歩後ろを歩いている。
坂田は私のことを気にしてか たまにちらりと後ろを振り向いて、私が付いてきているのを確認するとすぐに ふいっと前を向いて、何も無かったように歩き出す。
別に、一緒に行けって言われたとはいえ 互いに必要なものだけ買って バラバラに帰った所で、ちょっとした小言で済むだろうに。それでも わざわざちゃんと 私を気にしてくれているような優しさが、また私の心臓をつく。
諦めたいし、諦めなきゃいけない。そんなことはなんとなく分かっているのに、相変わらず私は坂田のことが好きなんだろうなって こういう時に実感してしまう。
センラの方が、絶対にいい男だと思うんだけど。なんて考えていると、いつの間にか着いていた目的の店。さっさと必要なものを見つけて帰らねば、と中に入ろうとすると 店に入る少し手前で固まる坂田。
無視をして中に入ることも出来たのだが、さすがに態度が悪すぎるかな なんて考えて、どうした?と恐る恐る尋ねる。
すると坂田は、ぶっきらぼうにも ん、と手を差し出してきて。
「 ーーーー…は? 」
「 はぐれるやろ、こんな大きくて人多いとこ 」
「 …いや、餓鬼じゃないんだし 」
「 俺、A見失ったら 見つけられる自信ないで。Aちっちゃいし 」
「 殴るぞおい 」
つい いつもの感じで返すと、ふって柔らかく笑顔を零す坂田。ーー私に向けられたのは、一体いつぶりだったかなんて考えてしまうほど最近隣で見ていなかったそれは、私の心を揺らすのなんか簡単で。
「 いつも繋いでたやん 」
「 そ、だけど 」
「 …Aはずっと、俺とこのままがええの? 」
「 …それは、」
「 俺はやだ 」
坂田の言う “このまま” は、幼馴染みのまま、なのか。気まずいまま、の意味なのか。考えている内に私の手は彼に握られていた。
1094人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
零生(プロフ) - ルテメナさん» ありがとうございます〜!私も自分で作り出したオリジナルキャラでみやのんはトップレベルで好きなので嬉しいです! (2019年4月5日 22時) (レス) id: c45c7990b9 (このIDを非表示/違反報告)
ルテメナ - 少し遅れましたが、完結おめでとうございます。お疲れ様でした!もうちょっと早くこの作品を知りたかったですw なんというか、みやのん大好き。(え) (2019年4月5日 22時) (レス) id: 725488054e (このIDを非表示/違反報告)
零生(プロフ) - キャンディットさん» キャンディットさん! いつもコメントありがとうございました!! 更新の力にさせてもらっておりました。私も大好きです! 本当にありがとうございます!! (2018年12月28日 20時) (レス) id: c45c7990b9 (このIDを非表示/違反報告)
キャンディット(プロフ) - すごく、すごく良かったです!!もう高評価1つじゃ足りない…。完結おめでとうございます!!零生さん好きです!!(?) (2018年12月28日 18時) (レス) id: 8583ad440a (このIDを非表示/違反報告)
零生(プロフ) - もかさん» 長い間のお付き合いありがとうございました!私も書いていて、幸せになってよかった〜と思っております笑 他の作品も頑張りますので、良かったら覗いてやってください! (2018年12月27日 16時) (レス) id: c45c7990b9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ