当て馬気質 82 ページ37
.
花火の上がる音をBGMに、私は教室までの道のりを全速力で駆けて行く。
他の生徒は皆、外で見ているのか学校内はしんと静まり返っていて 自分の息遣いがやけに大きく耳に響いた。
ーーー坂田は今、教室で何を思っているのだろうか。
走っている中、私の頭を支配するのはそのことで。センラを選んだって思ってるかな。また 俺は選ばれなかったって泣いてるのかな。もし、泣いていたとしたならば。
その涙を見せるのは、一体次は誰になるのだろうか。
どれだけ好きって気持ちを辞めたいと願ったって、結局の所 この気持ちはそんな簡単に無くせるものではなくて。彼の涙を拭うのは、側で支えているのは これから先もずっと、私でいたいと。
それがもし、恋人とか好きな人とかそういう立場ではなかったとしても。幼馴染みって抜け出せないその関係性であったとしても、それでも良いと思えたのだ。ーーその立場を利用したとしても、私は坂田の隣にいたい。いつか、彼が誰かの隣に行ってしまうまでは、私が。
着いた、目的地。教室の扉を静かに開けると 坂田は打ち上がる花火を ただただぼうっと窓から見上げていた。緑、黄色、青。照らされる坂田の顔はどれも物憂げな面持ちで、そんな暗い表情をしているのは、私が来なかったからかとすぐにでも問いただしたくなる。
けれど、そんなことよりも。私は彼に、坂田に。聞きたいことも言ってやりたいことも、山程あるのだ。例えば、そう。なんで私を 花火に誘ったのか、とか センラと先に約束してたのに、とか 他の女の子と見なくていいの、とか。他にも。
「 っ、坂田！ 」
「 …A？ 」
彼の名前を呼べば、信じられないようなものを見るみたいに目を大きくして私を見て。
その顔を見ていると、坂田の我儘のせいでって責め立ててやろうと思っていた気が全部削がれて、ずっとずっと、迷いながらも心の底にあった言葉が 無意識の内に口から滑り出ていた。
「 …好き 」
「 え…？ 」
「 坂田のことが、好き 」
観覧車の時とは違って、逃げようと思えば逃げられるその場から 私は逃げる事はしなかった。坂田は、私の言葉をゆっくりと飲み込むように 俯きがちに二、三度 瞬きをして それから、私のことをじっと見据える。
「 …僕も、」
「 ーーー僕も、Aのことが好きだよ 」
坂田の声の後、ドンッと今日一番の音が響く。
驚いて二人して見上げた黒色の空には、綺麗な赤色の花火が咲き誇っていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1094人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
零生(プロフ) - ルテメナさん» ありがとうございます〜！私も自分で作り出したオリジナルキャラでみやのんはトップレベルで好きなので嬉しいです！ (2019年4月5日 22時) (
レス) id: c45c7990b9 (このIDを非表示/違反報告)
ルテメナ - 少し遅れましたが、完結おめでとうございます。お疲れ様でした！もうちょっと早くこの作品を知りたかったですw なんというか、みやのん大好き。(え) (2019年4月5日 22時) (レス) id: 725488054e (このIDを非表示/違反報告)
零生(プロフ) - キャンディットさん» キャンディットさん! いつもコメントありがとうございました!! 更新の力にさせてもらっておりました。私も大好きです! 本当にありがとうございます!! (2018年12月28日 20時) (レス) id: c45c7990b9 (このIDを非表示/違反報告)
キャンディット(プロフ) - すごく、すごく良かったです！！もう高評価１つじゃ足りない…。完結おめでとうございます！！零生さん好きです！！(?) (2018年12月28日 18時) (レス) id: 8583ad440a (このIDを非表示/違反報告)
零生(プロフ) - もかさん» 長い間のお付き合いありがとうございました！私も書いていて、幸せになってよかった〜と思っております笑 他の作品も頑張りますので、良かったら覗いてやってください！ (2018年12月27日 16時) (レス) id: c45c7990b9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
