当て馬気質 80 ページ35
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離して、と 両手で彼の胸板を押すも 驚く程にびくともしなくて。それどころか 私の両手はセンラの片手に包まれてしまう。
早く坂田のとこに行かなければ、私を待ってくれているはずなのに。ーーーやっと、ちゃんと坂田と向き合える勇気も出たのに。
「 …俺が、いつまでも優しく居ると思った? 」
「 センラ… 」
「 俺かて男なんやけどな…人が来ぉへんってことも伝えたはずなんやけど 」
俺が、黙って坂田のとこに行かせる諦めが良くて優しい男やって ほんまに信じてた?と、私の目をのぞき込むセンラ。
信じてた、も何も。疑うなんてことさえしてなかった。坂田の所に行かせてくれるとかくれないとか そんなことを考える前に私は、センラには ちゃんと伝えに行かなければと思って、走っていたのだ。
答えに困って 黙っていると、目の前の彼は 声出さへんと 気付いてもらえる可能性も無くなるよ?なんて 意地悪く笑う。ーーけど、何処か。彼が無理しているように見えるのは。
( ーーー私が、センラを信じてるから、なのかな。)
きっと、センラなら私の嫌がることはしないだろうとか。センラなら、私の出した答えも全部受け止めてくれるだろう、とか。
結局のところ、私は終始 私に優しくしてくれるセンラに甘えていたのだ。こんな酷いことをさせてしまうぐらいには。
出る言葉も無くて、ただ涙を流さないようにって 唇を噛み締めていると 私を意地悪い顔で見下ろしていたセンラは、はぁ、と溜息を零す。
「 …なんも、言わへんのやね 」
「 …言えないよ、何も 」
「 嫌とか最低とか気持ち悪いとか、言うてくれれば 俺やってAちゃんに散々言えたかもしれへんのに。こんな黙ってられたら、…いつものAちゃんのままやったら、これ以上酷いことも出来ひんやん 」
はぁ…、と今度は長い溜息をついた センラはそっと私の手を離して 1歩距離を取った。
それから気まずげに視線をさ迷わせて、がしがしと頭を掻く。
「 やっぱ慣れへんことはやるもんやないね、胸糞悪いわ 」
「 やっぱセンラは優しい男じゃん 」
「 ほんまそうやって舐めてたら キスするで 」
「 っや、それは…!! 」
「 ふふ、嘘。…時間取らせてごめんな、わざわざありがとう。花火終わる前に はよさかたんとこ行ってあげて 」
「 …ん 」
どうぞ、お嬢様 なんて道を開けてくれるセンラに ほんの少しの照れ笑いを向けて、私は坂田の元へと駆けたのだった。
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零生(プロフ) - ルテメナさん» ありがとうございます〜!私も自分で作り出したオリジナルキャラでみやのんはトップレベルで好きなので嬉しいです! (2019年4月5日 22時) (レス) id: c45c7990b9 (このIDを非表示/違反報告)
ルテメナ - 少し遅れましたが、完結おめでとうございます。お疲れ様でした!もうちょっと早くこの作品を知りたかったですw なんというか、みやのん大好き。(え) (2019年4月5日 22時) (レス) id: 725488054e (このIDを非表示/違反報告)
零生(プロフ) - キャンディットさん» キャンディットさん! いつもコメントありがとうございました!! 更新の力にさせてもらっておりました。私も大好きです! 本当にありがとうございます!! (2018年12月28日 20時) (レス) id: c45c7990b9 (このIDを非表示/違反報告)
キャンディット(プロフ) - すごく、すごく良かったです!!もう高評価1つじゃ足りない…。完結おめでとうございます!!零生さん好きです!!(?) (2018年12月28日 18時) (レス) id: 8583ad440a (このIDを非表示/違反報告)
零生(プロフ) - もかさん» 長い間のお付き合いありがとうございました!私も書いていて、幸せになってよかった〜と思っております笑 他の作品も頑張りますので、良かったら覗いてやってください! (2018年12月27日 16時) (レス) id: c45c7990b9 (このIDを非表示/違反報告)
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