当 て 馬 基 質 II ( となりの坂田。)

当て馬基質 65 ページ20

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｢ うわっ!! な、なにっ!? ｣


｢ えっ、ごめん。マヨネーズついてたから ｣





いつもの癖で無言でやった事がいけなかったのか、慌ててバッと私から距離を取って顔を背ける坂田。そんなに嫌だったかと 苦笑いを零すと、坂田は あ…と申し訳なさそうに眉を下げながら私の方へとそうっと視線を戻す。

それから 距離をとった分を取り戻すかのようにテクテクと私の前まで歩いてきたかと思うと、ごめん 緊張して、と。


緊張、ってどういうことだろう。あんなこと、今まで何度だってやってきていたのに。
ドキドキした、とかそういう事だろうか。…なんで？なんで今更坂田が私にドキドキしてるんだろう。



自分に都合の良い変な想像が始まりそうで、私は目の前でしょんぼりしている坂田に 大丈夫だよ！と慌てて言葉を返す。





｢ …え、えっと ｣


｢ う、うん ｣


｢ A、まだ何も食べてないでしょ。…たこ焼き、いる？ ｣


｢ う、うん！食べる ｣


｢ はいっ ｣





話題を変えようとしたのだろう。突然の提案に うんうんと頷いていると、ずいっと 箸で摘まれて出されたたこ焼き。緊張する、とか言う癖して 自分もいつも通りの行動抜けてないじゃん。

私は 幸せと嬉しさと、坂田が言ったほんの少しの緊張を たこ焼きと一緒に飲み込む。
1個食べ終わった所で、ありがとう、と微笑むと 坂田も ええで！とにっこり笑ってくれた。






｢ …なんか、2人の絡み見たの久々な気ぃするわ ｣


｢ そう？てか 志麻、シフトは？ ｣


｢ いやー、実は今日めっちゃ入ってたんやけど 腹減ったから抜けてきた ｣


｢ 最低だな！ ｣


｢ いいだろ別にちゃんと回ってんだし！ ｣


｢ 善意で働く俺と大違いだよねまーしぃ ｣


｢ 坂田はまだ働くの？ ｣


｢ うん！俺これ食べ終わったらまた働くよ。良かったら来てね！ ｣


｢ いや…流石に自分のとこには行かないかな…ね、みやのん ｣


｢ ん？うん ｣


｢ 宮野さん めっちゃ死んどるやん(笑) 何？腹減ってんの？俺のたこ焼き食う？ ｣


｢ えっ!? え、いいよ悪いし大丈夫！ ｣


｢ 振られた… ｣


｢ あ、いやそういう訳じゃ…!! ｣





みやのんと志麻の新鮮な絡みを坂田と横並びでくすくす笑いながら見ている、以前では当たり前だったようなこんなことでさえも、今ではすごく幸せで。

ちらり、と見上げた私の視線に気付いた坂田は へへ、と笑いを零して。こんな状況に、勘違いしそうになるのなんて、きっと誰でもそうだ。

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