Probably not (ページ29)

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『A、……こっち見て』

「………っ、やだ、メイク落ちてる」

『いいから。ちゃんと俺の事見て』

俯いた視界の端に、胡座をかいた彼の脚が見える。

ふわっと私の頭を撫でると

そのまま手を頬まで滑らせて

自分の方に私の顔が向くように添えた。

結星に見つめられると余計に泣きそうになって

堪えようと唇を結ぶけど、震える。

情けなく溢れた涙を、彼はまた袖口で拭った。

『………さっきから、俺ドキドキしすぎてやばいんだけど』

「っ…」

『今言ったの、全部ほんと？』

「っう、ん…」

『ねぇ、それって』

「好き」

『っ…！』

「結星が、好きなの。

檜山くんよりも、…誰よりも結星に会いたかったの」

信じられないと言ったような顔で

彼は私のことを真ん丸くした目で見つめた。

私の目元を拭うその手を捕まえてぎゅっと握る。

本当だって、少しでも伝わるように。

「好き、…っなの、嘘じゃない」

また泣きそうになって声が変に揺れる。

すると、結星は唇をぐっと噛んで

空いている手を後頭部に添えた。

「っ、…！」

一瞬だけ触れた唇に、涙が引っ込む。

『…………ん、泣き止んだ(笑)』

ニッと笑った笑顔が至近距離にあって

胸が大きな音を立てた。

少し右に顔を傾けた結星に

反射的に目を瞑ると、次の瞬間鈍い音が鳴る。

そして、前歯あたりが痛んだ。

「っ…い゛」

『痛って？！』

「バカ！！勢い付けすぎ！！」

『……ご、ごめん』

口元を押さえながら彼を睨むと

痛そうに顔を歪ませながら手を合わせて謝られた。

なんでこう、少しもいい雰囲気にならないんだろう。

なのに、嫌じゃないから私も相当なんだろうな。

『こんな奴だけど、いいの』

「…うん、期待してない」

『檜山くんみたいなキラキラないけど』

「知ってる」

『っ、めちゃくちゃAのこと好きだから

………すぐ嫌いとか言われても別れらんないけど、いいの？』

「…………ん、いい…よ」

自分で言っといて顔を真っ赤にした結星。

照れ隠しに、後ろからガバッと私に抱きついて

あー！じゃあ一生離しません覚悟してください！！なんて

部屋に響くくらいの大きな声で叫び始めた。

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