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「でもなんでわざわざ垢飛んだの？みんなの分見たとか？」
『いや……それは流石に』
「じゃあ、なんで私だけ？？」
『……………………可愛いって思ったから、気になって』
「っ？！待って、今何って」
『いや、だから！
Aちゃん見て可愛いなって思ったから…つい』
「……………返事、困るんだけど」
顔を赤くして俯く姿に、少し気まずくなる。
大して見ても意味無いアスファルトに目線を落として
ただ足を進めていると隣でスマホを弄るのが見えた。
あー、これ会話無くなって余計キツイやつかな。
1人で帰ればよかった。
なんとも言えない沈黙の中、そう思った。
『………じゃん！！』
「え、…」
『どーよ、これ』
可愛くなぁい？！と言う彼は、もはやギャル。
見せられた携帯の画面に映っていたのは
クマのクッキーが乗ったケーキだった。
横のカフェラテにはラテアートが施されていてそれもクマ。
自然と目を輝かせて、画面に釘付けになってしまう。
数秒後、ふっ、と少し乾いた
笑い声に気づいてハッとする。
…………だ、だめだ、釣られちゃ。
「…………………い、ったから前に」
『そう？？なんか地図見ても
俺よくわかんないんだけど最寄りどこだった？』
「え、と………」
行ったこともなければSNSで見たことも無い。
だから当然情報は0で。
口ごもる私に痺れを切らしたのか
彼はひょいっと携帯を私から離す。
「あ、…」
『………………行きません？一緒に』
「っ…」
『まぁ、1回さ、道が分からない俺を
助けると思ってでいいから』
美味しそうだし、と画面を見ながら頷く彼。
………………行きたい。
そう思ってしまえば先に言葉は出ていて
その返事を聞くと彼はニッと歯を見せて笑った。
なに、その古いおっさんみたいな笑い方。
「………長瀬」
『え、さっき呼び捨てだったのに』
「あれは、珍しいから聞き間違えたら失礼だと思って…！」
『ふは、めっちゃいい人じゃん』
「っ…」
『で、なに？』
「連絡先、…ないから」
『俺から聞こうと思ってたのに〜』
ダルいテンションは放っておいて
さっさとLINEを開く。
追加された結星って文字と彼らしいアイコンに
少しだけ口の端が緩んだ。
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作者名：むう
| 作成日時：2022年2月1日 22時
