▷7 ページ7
ああは言ったのはいいけど行くところなんてない。
家だって私が第一志望に落ちた時点で未だに少し気まずい空気だ。
行く宛てもなくだだっ広いボーダー内を歩く。
「よお奈良坂。学校はどうだ?」
「……名字で呼ばないでくださいって言いましたよね」
いつぞやの米屋みたく片手を上げて私に声をかけてきた太刀川さん。まるであのときと同じだ。踏まれた地雷に歳上であるにも関わらず睨みつけた。
「学校は……、まずまずですよ」
誰も奈良坂透を知らないから。その点を踏まえたら第一志望に落ちてよかったんじゃないかとは思う。
それを聞いて太刀川さんは腕を組みながらよかったなと軽く笑った。
「そういえばさっき狙撃手の訓練見てたんだが、お前、狙撃手やめたの?」
「はあ?」
一体いつの話をしているのだろうかこの人は。私が狙撃手をやめたのはもう1ヶ月以上も前の話なのに。いや、そもそもこの人は自分の興味のあることにしか目がいかないんだろう。
「やめましたよ」
「なんで?」
「なんでって……」
格子状の瞳がじっと私を貫く。この人は本当に何を考えているのかわからない。視線がぶつかるのが嫌でつい視線を地面に落とした。
ただ、待っている。この人はただ、私の言葉を待っていた。
「……他のポジションもやってみたいなって、ただそれだけですよ」
「で、攻撃手に転向したってわけか」
「……はい」
本当は比べられるのが嫌で逃げただけの弱虫のくせに。何が他のもやってみたい、だ。
自分を守るためだけに後付けされたくだらない理由。
「ま、攻撃手ならランク戦できるな」
「嫌ですけど」
「そういうなって。稽古つけてやるから」
「だから……」
断る暇もなく太刀川さんはじゃあなと手をひらひら振りながら私の横を通り過ぎる。
……なんだあの人。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 307人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「WT」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
澪音(プロフ) - コメント失礼します。私はあまり夢主と原作キャラの兄弟設定の作品を読まないのですが、この作品は凄く凄く面白くて、もう本当に双子なんじゃないかなと思ってきてます(笑)これからも応援してます！頑張って下さい！！ (2022年7月26日 0時) (
レス) @page18 id: 858f3638ed (このIDを非表示/違反報告)
ムギ（Life×89）(プロフ) - 空白さん» 返信失礼します。直りました！修正していただきありがとうございました。 (2022年3月15日 7時) (レス) id: cb7c3d6633 (このIDを非表示/違反報告)
空白(プロフ) - ムギ（Life×89）さん» 返信が遅くなり申し訳ありません。ご指摘ありがとうございます。修正させていただきましたが、直りましたでしょうか? (2022年3月15日 1時) (レス) id: 0813e35425 (このIDを非表示/違反報告)
ムギ（Life×89）(プロフ) - コメント失礼します。あらすじ画面の”こころ”というところを押してみたら自分の垢ページに飛んだのですが、、どうしてなのでしょうか？伝え方が下手くそですみません、、、 (2022年3月14日 1時) (レス) id: b068be7db6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作成日時：2022年2月4日 10時
