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「どこが好きなわけ」
「どこって言われても……強いて言うなら、全部」
「付き合いたてのカップルみたいなこと言ってんな？」
吉良ヒがそういうこと言う日も来るのかな、と予期してはいたが、まさかかさぶた相手に言うとは。
もはや喜劇である。普通の女子相手なら、その相手を呪うだけで済んだのに。かさぶたが好き、とか言うから、感情の行き場所がない。
やっぱり、相手は普通の女子であって欲しかったし、欲を言えば私がなりたかった。
「名前とかあるの？ そのかさぶた」
「まだ無え。つけるか」
うーん、と目を瞑り考える吉良ヒ。お前も何か案出せよ、と言うので、サブ子と答える。かさぶたのサブ子。
「だっさ」
「黙れよ、ブタ子よりマシでしょ」
それにしてもサブ子はねえよ、とゲラゲラ笑う。
「じゃあ、Aにするわ、名前」
そう口にしたのは私の名前で、思わず、はぁ？ と声が裏返った。
「やめとけ？ お前それはやめとけ。好きな女に他の女の名前つけるとかマジで頭おかしいでしょ。適当につけるなもっと考えろ」
「いや、冗談だわボケ。でもアレだな、思ったよりもお前が真剣に聞いてくれてちょっと嬉しーわ」
いつもは嬉しいとか言わないくせに、感謝を口にするのがこの局面って一体どうなっているんだ。名前つけるって、ハムスターか何か？
しかし、自分の膝小僧を優しい顔で見つめる吉良ヒを見て考えをあらためた。
普段はしない感謝をして、必死になって、当然だ。好きなヤツの名前なんだから。
「やっぱり、名前は一人でじっくり考えてみるわ。自分の好きなヤツだし」
「それで良いんじゃない？」
くれぐれも私の名前はつけてくれるな。もっと考えろ、と言ったのは吉良ヒとかさぶたとの恋を真剣に応援しているからでも、ましてや優しいからでもない。
単純に、吉良ヒがその名前で他の誰か、それも自分の好きなヤツ、を呼んでいるかと思うとゾッとしない。
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マトリックス(プロフ) - 杳覇さん» コメントありがとうございます^_^ この話自分でも気に入っているので、そう言っていただけてとても嬉しいです！文章も褒めてくださりありがとうございます！！！ (2020年12月4日 6時) (
レス) id: 42c58f3b28 (このIDを非表示/違反報告)
杳覇(プロフ) - コメント失礼致します。かさぶたに恋とは、また新しい発想ですね…！しかも夢小説…！！ 圧倒的文体センスで思わずのめり込んでしまいました。その先の二人について、色々妄想できるのも楽しかったです。素敵な作品をありがとうございました。 (2020年12月2日 23時) (レス) id: 8682462ce1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：マトリックス | 作成日時：2020年4月8日 4時
