story58 ページ8
「行っちゃった…良かったのかな。買い物も終わったのに」
「彼奴がいいと言ったのだから大丈夫だ」
イゾウはあっけらかんと言う。本当にいいのか…わからないけれど。イゾウと本人がそう言うのだから、とAはなにも言えなかった。
「さて、これからどうする？」
「イゾウ、自分の買い物はいいの？」
気になっていたことを聞いてみた。
「ああ、明日マルコと回ることになってるからな」
「じゃあ本当に付き合ってくれただけだったのか、ありがとうね」
「いや、気にするな。俺も一緒に行けて良かった」
イゾウは「少し歩こうか」と言ってAの手を引き、商業施設を出た。
先程の人の波は変わらず、色んな声がする。たまに顔見知りの人たちとすれ違って、軽く手を振ってみたり。その手にはなにかしら食べ物があって、エースの言っていた通りだと笑った。
少し道を外れると、そこは閑静な場所。人はまばらで、遠くの方に港が見えた。
いつの間にか、煙管を咥えたイゾウは紫煙を食んでいた。
「歩き煙草」
指差し注意すると、ニヤリと笑う。
「ルールを守らねぇ奴は嫌いか？」
「少しね」
「そうか、それは困ったな」
その割には楽しそうで。困ったようには見えない。
「イゾウの言葉は信じられない」
「何故？」
「その場の空気に合わせて言っているだけでしょう？」
「はは、否定しない」
イゾウは狡い。
本質に触れられないように、するりするりと躱していく。本音が見えず、読み取りにくい。
「感情、見せてくれないよね」
「そうか？ わかりやすいと思うが」
「ううん、表面上はわかるけど。内側が、わかんない」
隠すのが上手なのだ。そういう立場にいるからか。
イゾウはあの船の中で、一番ポーカーフェイスだと思う。
「……」
イゾウはなにも言わなかった。ただ、繋いだままの手がぴくりと動いた気がして。Aは唇を噤む。
でも、すぐにイゾウは柔らかな笑みを浮かべ直した。気づかれないように、うまく隠そうと。
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fuwari(プロフ) - アイズさん» ありがとうございます！嬉しいです。更新頑張ります！ (2022年10月15日 14時) (
レス) id: ff96477080 (このIDを非表示/違反報告)
アイズ(プロフ) - 面白くて一気に読んじゃいました！更新楽しみにしてます！ (2022年10月3日 0時) (レス) id: 3dc7d1a49b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：fuwari | 作成日時：2022年9月17日 13時
