story56 ページ6
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Aがイゾウと買い物に行こうと思ったのは、彼のセンスが良いからである。
どれにするか悩んだ時は、的確なアドバイスが貰えると思ったのも。あれだけ美しい着物を着こなし、ひとりで芸術のような髪を結い、麗しい化粧ができるのだから。
イゾウほど的確な人物はいないだろうと思ったのだ。
だが。Aはひとつ思い違いをしてしまっていた。
彼もまた妹を溺愛する兄ということを。
施設内は人でごった返していて、背も高くないAは店を探すことすらできなかった。
おろおろしていたのが悪いのか、イゾウが先導して店に入ってはAに服を見繕って試着室に押し込まれる。出てきては着替え、着替えては見せて。そして、それらすべてを買う始末。
「え、待って待って、もういいよ！？」
Aが制止する声に聞こえないふりをして、イゾウはさっさとそれを店員に渡した。巾着から出したお金でさっさと支払ってしまう。
既にイゾウの腕には数え切れないほどの紙袋が掛かっており、Aは手ぶらである。ついでに言えば、島から持ってきたお金を使うどころか、鞄を開くことすら許されなかった。
すべてイゾウが持ってきたお金、つまり白ひげからの小遣いから出ているのである。
「ほら、次行くぞ」
着物美人が、抱え切れないほどの紙袋を持っている。そのギャップにくらりとした。
Aが想像していたショッピングとは全く違う。明らかに強引で、Aペースのはずが気付けばイゾウに振り回されていた。
「や、もう、ほんとにいいよって…！」
服屋を回り終え、鞄を買い、3件目の靴屋で勝手に靴を履かされ、さすがにAも声を上げた。イゾウはやっと顔を上げてAに視線を向ける。
「まだたりねぇだろ？」
「いや、十分だって…」
げっそり、疲れて項垂れる。買い物って、こんな疲れたっけ。
「女は物欲の塊だと思っていたが」
ナースなら大喜びで着いてくるぞ、と真顔で言われて、笑うしかなかった。
「一回、休憩するか？」
「いや、もう終わろ……」
イゾウの肩に手を当てて掠れた声を出す。連れ回されるのもこんなに体力を使うのか。
「そうか、残念だな」
イゾウははらりと着物をはらうと、立ち上がり会計をしに行った。抜かりなく、買ってくれたらしい。
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fuwari(プロフ) - アイズさん» ありがとうございます！嬉しいです。更新頑張ります！ (2022年10月15日 14時) (
レス) id: ff96477080 (このIDを非表示/違反報告)
アイズ(プロフ) - 面白くて一気に読んじゃいました！更新楽しみにしてます！ (2022年10月3日 0時) (レス) id: 3dc7d1a49b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：fuwari | 作成日時：2022年9月17日 13時
