story54 ページ4
うまくまとまらないまま、マルコの執務室を後にした。
とりあえず部屋に戻ろうと廊下を進む。
どうしてこんなにも頭の中がぐちゃぐちゃになっているのか、わかるようでわからなくて。考えるのをやめようと、それに蓋をした。
そんなことを考えているよりも。マルコに言われたように一緒に来てくれる人を探さなければならない。
誰がいいか、考えている内に部屋の前にたどり着いて。ふと、前の部屋の扉を見つめた。
彼なら。そう思って。
「イゾウ」と書かれたネームプレートの下をノックする。しばらくしてから返事があって、Aはゆっくりとドアノブを捻った。
思えば自分以外の人の部屋に入るのは初めてだ。広さや間取りは同じであれど、家具やその配置はその人仕様で。イゾウらしさが見えて、Aは息を吐いた。
部屋の奥、窓際に置いてあるベッドに腰をかけ、イゾウは拳銃を手にしていた。しかし、Aの姿を見ると、「おいで」と優しく声をかけてくれる。
「お邪魔します」
勧められたソファーにおずおずと腰を下ろす。その様子を見て何故かイゾウは笑みを深くした。
「どうした？ お嬢が来てくれるなんて初めてだな」
「ああ、うん。ちょっと、相談があって」
きっと、イゾウは知ってるんだろうな。
不意にそんな思いが浮かんだ。マルコと話をしたのはついさっきのことだが、イゾウもマルコと同じくして、船内で起きていることすべてを網羅しているような、そんな印象があった。
「午後から、島に行く予定じゃない？ で、降りようと思ってて、」
「ひとりでか？」
ううん、と首を横に振る。
イゾウは察しが良い。色々とわかった上で、それでもAに言わせようとしてくる。
だから、Aも。ちゃんと自分の言葉にして。
「それで、イゾウがもし大丈夫なら、一緒に来て欲しいなって」
「俺でいいのか」
「うん、イゾウがいい」
「そうか」
イゾウはふと目元を和らげた。
「ちゃんと言えたな」
「…言わないって、思ってた？」
「半分くらいは」
「イゾウが、ちゃんと聞いてくれたから言えたんだよ」
「はは、ならよかった」
イゾウは頷いて。
「じゃあ、また午後に」
「うん」
約束を取り付けて、Aはイゾウの部屋を後にする。
自分の部屋に戻って。
ちゃんと言えたんだ、と思うと少し、嬉しくなった。
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fuwari(プロフ) - アイズさん» ありがとうございます！嬉しいです。更新頑張ります！ (2022年10月15日 14時) (
レス) id: ff96477080 (このIDを非表示/違反報告)
アイズ(プロフ) - 面白くて一気に読んじゃいました！更新楽しみにしてます！ (2022年10月3日 0時) (レス) id: 3dc7d1a49b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：fuwari | 作成日時：2022年9月17日 13時
