story78 ページ28
柔らかな日差しが部屋に差し込む。
薬が効いたのか、朝まですっかり眠ってしまったようだった。自然と目が覚めて、ホッと息をつく。
上体を起こすが重みはそこまでない。昨日の怠さは消えたように思えた。
視線をずらす。簡易の丸椅子に丸まった背中が見えた。
一晩中傍にいてくれたのだろうか。その頭が舟を漕いでいる。一瞬起こすべきか悩んだものの、その肩に手を伸ばすことにした。
「マルコ、」
そっと揺らす。瞼が小さく震え、瞳が顔を出した。
「あ…？ ああ、起きたのかよい」
まん丸になった瞳がすぐに細まって、大きな手が額を包む。
「おはよう、A」
「おはよう、マルコ」
「熱は…下がってんのか？ これ」
「まだ測ってなくて。今起きたとこだから」
測ってみるね、と体温計を挟む。しばらくして出た数値は37.3度。昨日よりは下がっている。マルコもそれを見て一安心したようで、笑みが浮かんだ。
それから、Aに足を見せるように指示をする。包帯を取ると、マルコは消毒液を手にした。
「少しは楽になったか？」
「うん、だいぶ楽になったよ。ありがとう」
「よかった。怪我の状態も安定してきてる。このまま薬を飲み続ければ良くなるだろう」
「ほんと？」
「ああ。でも無理はするなよい」
無理をすると体に響く。それはもう重々承知だから。Aは素直に頷いた。
.
Aの体調は順調に回復していき、その夕方には37.0度で安定。翌日にはすっかり平熱に戻っていた。
マルコの許可もあり、食堂に入る。二日ぶりなのに、皆が心なしか嬉しそうにこちらを振り向いた。
「A復活か！？」
「治ったのか！ よかった！」
「心配したぞー！」
「もう無理すんなよ」
飛んでくる声に、Aは少し照れながらも頷いてみせる。
「ごめんね、心配かけて」
「気にすんなって！ 元気になってよかった！」
「うん、またゆっくりやっていくよ」
「でもまだAに仕事ふんなよい」
「わかってるって！」
ぎゃははっと笑うその輪に久しぶりに入ったような感覚。たった二日離れただけなのに、こうも置いて行かれたような気持ちになるなんて。
随分寂しがり屋になっちゃったのかもしれない。
あの島では心配してくれるような関係性の人はいなかったから。きっと、自分の居場所はここにあると思った故の感情。
ああ、なんて素敵なんだろうか。温かくて心地よくて。
笑う皆を見て、そう思った。
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fuwari(プロフ) - アイズさん» ありがとうございます！嬉しいです。更新頑張ります！ (2022年10月15日 14時) (
レス) id: ff96477080 (このIDを非表示/違反報告)
アイズ(プロフ) - 面白くて一気に読んじゃいました！更新楽しみにしてます！ (2022年10月3日 0時) (レス) id: 3dc7d1a49b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：fuwari | 作成日時：2022年9月17日 13時
