story53 ページ3
「いったあ」
絶対赤くなった！ と抗議をしながら、じんじんと痛むそこに手を当てる。まったく、手加減をしないんだから。
「お前がとんでもねぇことを言うからだよい」
「とんでもないって…だって買い物に行くだけよ」
「それだ」
マルコは立ち上がり、机を回ってAの隣に立った。そのまま、手を伸ばす。また叩かれる、と目をぎゅっと閉じたAが感じたのは、先程とは違う、温かい感触だった。
そっと目を開けると、視界いっぱいに柔らかな表情を浮かべたマルコの顔が広がって。
指先で優しく、額を撫でてくれていた。
「なんで俺やエースが執拗に誰かを連れてけって言ってるかわかるか？」
その瞳に充てられて。正直に首を横に振る。
「どれだけ俺が空から偵察したからって、よっぽどの荒れ具合じゃなけりゃあその島の内情はわかんねぇんだよい。島には海賊を毛嫌いしている島民がいたり、はたまた悪い海賊もいたりする。そんな時、白ひげ海賊団の船から女がひとりで降りてきたらどうだ？」
「……」
その問いに、答えられなかった。
その後に続く言葉が、なんとなく予想できて。Aは口を噤む。
「それが白ひげ海賊団に対して負の感情を抱いている者なら、お前を脅しの道具に使うだろうよい」
マルコの指がそのまま頭の方へ上がった。ふわり、と撫でる温かい手。
こんな話題を出すのもあれだが、とマルコは前置いて言う。
「お前がこの船に乗るきっかけになったことだってそうだろ？ 怖い思いをしたろ。またおんなじ思いをして欲しくねぇから、俺もエースも口すっぱく言ってんだ。…わかってくれるか？」
「…うん、わかった」
いつの間にか下がっていた視線を上げると、かちりと目が合った。
まただ。また、この顔。
愛おしくて仕方がない、なんて。この表情だけ見てれば、この人が海賊だなんて想像できないくらい。
慈愛に満ちていて。心が苦しくなる。
ちゃんと考えてくれていたのに。
ああ、読み取れなかった。
「はは、落ち込むなよい。島を出たことがねぇんだから、仕方ねぇよ」
「うん、うん。ごめんね、ありがとう」
ぐちゃぐちゃになった感情が整理できなくて。なんとか笑ったけれど、うまく笑えていたかはわからない。
だが、マルコはなにも言わずにいてくれた。
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fuwari(プロフ) - アイズさん» ありがとうございます！嬉しいです。更新頑張ります！ (2022年10月15日 14時) (
レス) id: ff96477080 (このIDを非表示/違反報告)
アイズ(プロフ) - 面白くて一気に読んじゃいました！更新楽しみにしてます！ (2022年10月3日 0時) (レス) id: 3dc7d1a49b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：fuwari | 作成日時：2022年9月17日 13時
