story68 ページ18
エースに抱き上げられ、Aは甲板にあがっていた。
火を操るエースの体は人よりも温かい。その胸に頬を当て、身を委ねる。泣き腫らした目を閉じて、少し嗚咽は残っているものの落ち着いてきたようだった。
エースはそんなAを胸に抱き、腰を下ろしてゆっくりと体を揺らしていた。
「大丈夫かな、」
ハルタがぽつりと呟いた。マルコがナースの元に向かった今。うまくAを慰められるのか、皆が不安だった。彼女に話しかけたい。だが、もし怖がっていたら？
Aを傷つけたくない一心で、でも大切な妹が心配で。皆が作業をしながらエースとAを遠巻きに見る図が出来上がっていた。
「大丈夫だ、ハルタ。エースには弟がいるって言っていたし、見ろよ。ふたりとも落ち着いてるだろ」
「心配なのはわかるが、ひとまずは大丈夫だろうな」
ただ。ハルタが心配に思うのも無理はない、とサッチもビスタもわかっていた。
初めてAがパニックを起こしたあの日と、状況があまりにも酷似している。また彼女が不安定にならないか。それは兄たちの胸に不安と心配をもたらしていた。
「きっとナースたちが無事に戻ってきたらまた変わるんだろうな」
自分が行動をしたおかげで助かった命があることを知れば、ただあの日を繰り返すだけにはならないかもしれない。
少し考え方や感じ方が変わるなら、良いことだ。
ただそれはこちらが想像している以上に時間がかかるものかもしれないが。
「今はエースに任せて、見守ってやろう」
「…そうだね、そうするよ」
未だ、ハルタの表情には心配の色が残っているが、見守るのも兄の役目のひとつなのだ。
「あ！ マルコ隊長だ！」
「ナースが帰ってきた！」
誰かが叫んだ。それは波のように伝播し、誰もが駆け寄った。
その視界に入る、大切な仲間の姿。戦闘の後は見えるも、その目は爛々としている。
「全員無事だ！！」
大喜びであがった声が、喧騒の端にいたエースとAの耳にも届く。パッと目を開けたAはエースの腕の中で身じろぎをした。
「エース、私」
「ああ、迎えに行こうぜ」
立ち上がったエースはAをそっと下ろした。船員たちの輪の中へ入る。
一段とあがった歓声。甲板にあがってきたナースたちと目が合って。
「……A！！」
その美しい顔がくしゃりと歪んで、ナースたちはAを強く強く抱きしめた。
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fuwari(プロフ) - アイズさん» ありがとうございます！嬉しいです。更新頑張ります！ (2022年10月15日 14時) (
レス) id: ff96477080 (このIDを非表示/違反報告)
アイズ(プロフ) - 面白くて一気に読んじゃいました！更新楽しみにしてます！ (2022年10月3日 0時) (レス) id: 3dc7d1a49b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：fuwari | 作成日時：2022年9月17日 13時
