【僕のヒーローアカデミア】フタリシズカ (ページ9)

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月明かりだけが差し込む暗い部屋。私とお母さん、焦凍くんのいる静かな寝室で私の震えた声だけが静かに木霊している。焦凍くんは布団の中に潜り込んでしまっていて、既に寝てしまったのだろうと頭の片隅で思考した。

『お母さん……無理だよ。もう無理だよ。』

私はお母さんの体に抱きついて顔を埋めた。お母さんはその細いしなやかな腕で私を抱えると冷たいその手で私の赤く変わってしまった髪をゆっくりと撫でた。その手つきに私はお母さんの服を握りしめた。

『私、どうすればいいのか分かんない……！私はもうヒーローになるなんて望んでないし本当は燈矢くんと訓練になんて行きたくない！！でも、行かなきゃ……燈矢くんが一人になっちゃうの……！火傷してきちゃうの！！』

「A……」

『燈矢くんの火傷を冷ます為に個性を使うのも、訓練だっていって身の丈に合わない個性を強化しようと奮闘するのも……もう嫌なの！私は……どうしたら円満な方法で燈矢くんを救えるのか分かんないんだよ……。』

お母さんの腰に力一杯抱きつきながら涙を流す。お母さんは私が泣き疲れて眠るまで、ただ頭を撫でていた。
人に流されてばかりで既に期待すらされてなくて、だからせめて迷惑はかけまいと一度見た夢まで諦めて……。燈矢くんを救いたいのに私の方法では燈矢くんを幸せにできない。結局、私はどうしたいのだろう。何もかも分からなくなって、ただお母さんに泣きつく事しかできない私は本当に弱い“失敗作”なのだろう。

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