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瀬古杜岳にあるいつもの訓練場に着いた瞬間、燈矢くんは炎を放った。道中、何も言葉を発さなかった様子を見るにかなり不愉快の様だ。
先の口論で感情が昂ったせいか、力任せに放たれたそれはいつも見ていた赤い炎ではなくて蒼い……氷の様な炎だった。突然の事に私と燈矢くんは固まってしまった。が、直ぐに気を持ち直した燈矢くんは嬉々とした表情で私の肩を掴み、がくがくと揺さぶった。
「Aちゃん！！今の見た？！すごい火力が出たんだ！！いつもの比じゃないくらいの！！」
『う、うん。』
「すごいなぁ……！もしかしたら感情の昂りが火力に直結してるのかもしれない！！」
嬉しそうに目を細める燈矢くんから少しだけ目を逸らした。褒めちゃ駄目だ、駄目だ、駄目なんだ。
「ね、Aちゃんも氷を出してみてよ！」
『え、でも……。』
「大丈夫！Aちゃんは俺とおんなじなんだから絶対出来るさ！」
＿＿＿「Aちゃんは俺と一心同体なんだろ！？なぁ！！」
＿＿＿「二人で協力すれば最強さ！！」
＿＿＿「おまえらは二人で一つだ。」
ヒュッと喉が閉まる感覚があった。嫌な汗が背中を湿らせ、ぶるりと身震いをした。
出来なきゃ……燈矢くんと同じにならなきゃ……お父さんの言う事聞かなきゃ……嫌われる！捨てられる！！燈矢くんを一人にしてしまう……！！！
それは私の感情を昂らせるのには十分な事で、言われるがまま放った氷は真っ赤に染まっていた。まるで轟々と燃え盛る炎の様な氷は瞠目した。個性を使った箇所は酷い凍傷になってしまい、酷く痛む筈なのに何故か痛みはなかった。
「やっぱり、Aちゃんは俺と同じだよ！！」
＿＿＿その言葉に酷く安堵をしてしまう私はもう燈矢くんを救う資格なんてどこにもないのだと気づかされてしまった。
全部、諦めよう。燈矢くんの言う私になってしまおう。そっちの方がきっと楽だ。それに私もそっちを望んでいる。
『うん！これを見ればきっとお父さんも喜ぶね！』
消した筈の炎が再び燃え盛った。
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作者名：アサギ | 作成日時：2021年8月18日 3時
