謎解き遊戯のサイハテ

いずこへ消えた？ ページ14

乱歩は箪笥の中を無理に引っ張り出して
見せた。



乱「ほら」


そう云って乱歩が掲げたのは、ヴァイオリンの弦だった。側にはヴァイオリンがある。


『それが如何かしたの』


乱「わからないの？これが凶器さ」



周囲の刑事や警部たちはざわついたが、
Aは慌てふためくかわりに目を細めた。


『嗚呼…凶器…か…』



乱「だって死因は扼殺なんだろ？」


『まだそんなことわからないわ』


乱「だってほら、首に跡が残ってる。あの細さじゃこの弦以外に考えられないよ。でも、弦
って云うのは、こう…引っ張ると、自分も負傷しちゃうんだよ」

そう云いながら、乱歩は弦を引っ張るまねを
してみせた。


乱「だから犯人は、ゴム手袋をはめたんだと
思うよ」


得意げに、近くにあったゴム手袋を掲げた。


すると、一人の刑事が口を挟んだ。


「とすれば、一体全体、犯人は誰なので
しょう」



Aはきっと、余計なことを！、と、
思ったに違いない。


こいつは犯人を当てる、ともすれば、この勝負は私の負けでしかない_________




乱「犯人はねぇ___＿＿」



張り詰める空気、息がしづらい、針が落ちる音すら聞こえるほどの静けさとは、
まさにこのこと___＿＿＿＿



乱「この人の恋人さんだ」



Aの顔は急に腑抜けてしまって、
すっかりやる気を削がれてしまったようだ。

その拍子に舌打ちしてしまった。

乱歩は得意になりすぎて、それに気づかない。


乱「見立ての猟奇殺人かな？ほら、だって
イエスだよ？キリスト教の神様だ。きっと崇拝するに、これ以上のものはないね。そして
被害者をその神様と同等の立場に置く＿＿＿＿
恋愛の欲が高まりすぎたのかな？彼女に恋人があることは箪笥の上の写真でわかるよ。
犯人は被害者を扼殺し、その凶器である
ヴァイオリンの弦を服の中に仕込ませた。
ゴム手袋はそこに入ってたよ。そのあと、
この部屋をでて、去っていった。
特に見立て以外のひねりはないね。ただ単純。
犯人の住所かなんかは、被害者の携帯でも見ればわかるんじゃないの？」



この推理を聞いたとたん、Aは、


『ええ、お見事でした』

と吐き捨て、静かに現場を去っていった。


それにもかかわらず、誰も彼女を引き止められなかったのは、抑えきれてない膨大な殺気故
だと感じる。


事件、解決す。

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