謎解き遊戯のサイハテ

悪夢の延長線 ページ27

「ちょっ、ちょっと！何してるの！」


『ご、ごめんなさい、私、お皿を割ってしまったんです』


母親と見られる女性が少女の頬を鋭く叩いた。

母親は、なんというか、怒りで叩いたというより、何かしらの恐怖に対抗するようだった。


少女はそれに泣くでもなく、ただ叩かれた部分に冷たい掌を数秒当てただけだった。


「な、なんなのよぅこの子…普通は泣くもの
じゃないの？おかしいわ、変よ変！や、やっぱりおかしいのよ！」

では仮に泣いたとしても、それはそれで、
泣いた泣いたと同じような状態になるだろう。

全く矛盾の塊だが、人間は矛盾の生き物だから仕方ない。

とは云っても、これは流石に酷いようだ。

母親は怒っているのではなくて、恐怖しているのだ。

そもそも、どこかの名家でもないありふれた
の家系くせに、子供が親に対して敬語を使っているというのも、なかなか珍しい、否異様ではないか。

仮にも毎日一緒にいるわけだのに、この距離の差は、初対面の人と接するときのようだ。

むしろ初対面の人と接する時の方が、砕けているかもしれない。


また、手が伸びてきた。


彼女は一度手を引っ込めて、なんとフライパンを取り出してきた。



それでまたもう一度、ぐわんと腕を上げて、
精一杯振り下ろしたのだった。







それでも少女は泣かなかった。

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