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やがて店からでてきた風間が、風呂敷に包まれた品を渡してきた。
｢ちゃんと買ってきてやったから安心しろ｣
買うとは微塵も思ってなく、唖然としていた。
風呂敷に包まれた帯を渋々受け取るが、買わせてしまった申し訳なさから謝罪の言葉が出る。
｢う…すみません…｣
そんなAをよそに、風間の足はもうそれへと向かっているかのように早足で進んでいった。
なかなかついて来ないAを見ると、先程渡した手元の帯を取り上げた。
｢来い、A｣
風間に取られた帯を取り返すようにAが早足で追いかける。
｢今宵も島原へ行くぞ｣
*
その日の夜は島原の角屋へ飲みに行った。
酒なんて飲めないくせに、風間のそばにいるのがいつしか自分の務めになっていた。
どんなにたらふく飯を食べても、芸妓に酌されては何杯も飲んでいる。
平然と何杯も飲む風間を見て、心做しか不安になった。
｢風間さん…。お体、大丈夫ですか？｣
｢心配いらぬ｣
余計に心配させられるAは腹が十分満たされたので、外に出て一度空気を吸うことにした。
至る場所から聞こえる賑やかな音や騒ぎ声。上品な風間の影響あってか、Aは芸や女ではしゃぎ楽しむようなことに憧れはなかった。
柵に寄りかかってぼーっとしていると何者かに名前を呼ばれた。
｢不知火さん…｣
｢偶然だな｣
不知火はAの隣に来るなり、腕組みして同じようにして柵に寄りかかる。
｢俺は風間さんの付き添いです。不知火さんこういうところ来られるんですね。意外です｣
｢な、なんだそりゃ？
まあ…長州の連中とちょっとな｣
軽い会話を交えた後、沈黙と共に揃って暗い夜空を眺めていた。
月がない…京は曇りか。と心の中で呟くと、同時に不知火が呼びかけた。
｢話がある｣
｢え?｣
詰め寄り、Aの肩に手を置くと顔を近づける。
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作者名：鬼巳 | 作成日時：2017年10月28日 16時
