番外編 “愛しい時間” 天霧 ページ40
(普段男装、性明かしてる)
その日俺は自ら殻を破り、風間さんに買ってもらった着物を身に着けて女を楽しんだ。
すっかり男装に慣れてしまったせいか、懐かしい感じはしなかったが心做しか妙な気にはならなかった。
長い髪に櫛を通しているときだった。襖が開く音がして、視線はその方へ行く。
主は天霧さんだった。
｢あ…天霧さん。なんでしょう｣
見慣れない姿を目前に、立ちつくしている。
｢散策へ行ってもらおうと思っていたのですが…｣
それだけを伝えると、即決して気まずそうにすぐに去ろうとする。
Aは駆け寄り閉めようとしたその襖の取っ手を掴んだ。
｢散策行かせてください！｣
慌ててそう補うと
｢その格好で何を仰りますか｣
｢え…？｣
・ ・ ・
歯の低い日和下駄を履いても慣れないせいか少しずつしか前へは進めない。
隣を歩く天霧さんは、その歩幅に合わせて静かに歩く。
体が強ばり、申し訳なくなったAは、不意に天霧に目配せをする。
｢如何されました｣
｢つかまってもいいですか｣
｢……分かりました｣
渋々、承諾してくれた天霧の腕にそっと手を回す。
｢もしや、まだ慣れないのでは｣
｢そのようです…すみません｣
｢謝ることはありません｣
・ ・ ・
日の沈みかけた頃、個室で仕切られる和食料理屋へ連れられ、懐石料理を口に運ぶ。
いつもの自分とは少し違うことや、常時隣に天霧さんがいたことから、不思議と心は高まっていた。
食べさせ合いに抵抗があった天霧さんも、難なく受け入れるようなると、自然と嬉しい感情が沸き起こり…
「ん…は…」
飯と酒を酌み交わすと、いい感じに気分は酔ってきて、互いの体は自然に交じるように密着した。
もはや散策のことは頭になく、私たちはひたすらに自分たちの時間を楽しんだ。
Aが口付けをせがむと、己の欲を駆り立てられた天霧はそれに応えながらも、ゆっくりと衣服に手を忍ばせてその感触を楽しんだ。
｢ぁっ…｣
唇を重ねたまま自分が上になってそっと倒すと、撫でるように乳房にそっと手を置いた。
｢A…このまま、良いですか｣
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作者名：鬼巳 | 作成日時：2017年10月28日 16時
