15 雪村千鶴 ページ15
風間さんと最近会っていない。
風間さんの宿に泊まらせていただいてるというのに顔を合わせてすらいないし、不安な気持ちになった。
天霧さんに話を伺ってみたところ、俺が心配するほどのことでないという。
ただなんの根拠も無しにそんな事を言われても余計に気になってしまう。
もし風邪を引いて体調を崩されているのだとしたら、この際看病して、距離をとってしまったことの謝る機会を与えてほしい。
心の中で願いを込めて、慎重に襖を開け中をそっと覗き見る。
｢…!｣
｢馬鹿ッ｣
襖に手をかける俺の肩を掴んだのは不知火さんだった。
Aの身を体で押すと、襖をゆっくりと閉めた。
腰に手を当て、再びAに向き直る。
そして囁くような小さな声でこう言った。
｢ここじゃ気づかれる。話は向こうで｣
向こうで＿＿＿と言って不知火さんの行く宛は俺は知らない。ひらすらあとを着いていく。
それでも、聞く気にはならなかった。
寺の近くまで来ると、不知火さんはようやく足を止めた。
｢ここら辺でいい｣
*
前にも似たような感覚がある。
目が覚めると、自分は必ず違う空間にいる。
どうして、いつもそれに気がつくのが遅いのだろう。
｢待ち詫びたぞ、雪村千鶴｣
すぐ近くでするその声。それには聞き覚えがあった。
布団から身を起こすと、後ろに風間が片足を立たせて座り込んでいた。
その時、蘇った。
あの時、新選組の皆の攻撃を避けたあと、そこを一気に攻撃して怯ませた一瞬の隙に、影で見ていた私に一気に向かってきたこと…
あの時の恐怖を思い出したら震えが止まらない。
｢どうして貴方が…み、皆さんはどこ…｣
｢フン…俺様を前にしてまで、貴様は彼奴らの事を考えているのか？…感心せぬな｣
無性に腹が立った風間は近づき、強引に握るようにその小さな顎を掴みやる。
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作者名：鬼巳 | 作成日時：2017年10月28日 16時
