君を見つけるまで。 (ページ48)

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演技力には昔から自信がある。

あと、その場しのぎとかも大丈夫。

まあ、薮には嘘もバレてしまうけど。

そっと門を出る。

門の閉まる音がしても、

不審者(仮)は振り返らない。

今こそ勇気を振り絞るとき。

「あの！」

不審者(仮)は肩を１回震わせて

こっちを振り返った。

でも、何も言わない。

「涼介さまに何かご用事ですか？」

「え…」

「僕、私服警備員でして。

先程涼介さまは外出されましたが…」

執事とは全く関係ない感じを装ってみた。

「け、警察とか？」

意外と信じたみたいだ。

「まあ、何しようとしてたか分かれば、

教えてくだされば通報は致しませんが」

そんなこと警備会社としては

失格だろうけど、今はそんなこと関係ない。

「あ、じゃあ警備員さんじゃ分かんないかも

ですけど、ひとつ聞いてもいいですか？」

「なんでしょう」

「ここに、八乙女さんって執事いません？」

「あー、八乙女ですか？」

わざと思わせぶりにしてみた。

「どこか遠くに旅行に行った時に聞いたこと

ある名前ですね。たしか…宮城だったかな」

「いないんですね？」

髙木さんがしびれを切らしたように言った。

もしかして勝った？

「まあ、少なくとも僕は知りません」

「…そうですか」

「報告用に、名前だけいいですか」

「髙木雄也です。…あなたは？」

髙木さんの目がフードからちらっと除く。

「「あまたにあきと」です」

偽名を名乗る。

この偽名は前に薮がつけてくれた。

この人が薮と繋がってるなら、

この名前を言えば薮はきっと気づく。

「亀、谷、昼、音です。

それで「あまたにあきと」」

「珍しいですね」

少し疑われてしまった。

さすが探偵事務所の所長？

「ええ。もともと地方の出身なので」

「通報しないでくれてありがとうございます」

「大丈夫ですよ。では、これからは

紛らわしいことをしないようにしてください」

「…すみません。ありがとうございました」

髙木さんの背中を見送る。

果たして、上手くいっただろうか。

髙木さんがいなくなってから、

門を開けて物置に向かう。

通常業務を離れてしまったけど、

神さま、これくらいは許してください。