55 ページ6
.
ふらり、と。
彼がユニーク魔法を放った瞬間、寮生達が全員、バランスを崩したように足を縺れさせる。
そしてどさり、と倒れ込み、
皆静かにそのまま意識を飛ばす。
誰も言葉を発することなく、優しく意識を刈り取られて、Aのユニーク魔法も、まるで糸が解けるように彼らの中から消えていく。
だが順調かと思われたその光景は、ルシアが顔を歪めたことで終わりを告げた。
「……ッ、足りない」
魔力が足りない。
流石にこの人数に魔法をかけるのは一苦労だ。魔力が足りなくて、意識を奪うことはできてもユニーク魔法を取り除くことができない。
「……」
ルシアは難しい顔でしばらく黙り込むと、おもむろに右腕のシャツをまくって、
_____
「まさか在学中に、これを取り外す機会があるとは」
自嘲気味に呟き、彼は静かに腕輪を外す。
瞬間。
金色の風が、ルシアを中心に学園中に吹き荒れた。
これで強制的に今だけ学園内でユニーク魔法が使えなくなるが知ったことか。ルシアにとって、自分にとって重要なことが最優先なのだ。
「さ、烏野郎が来る前にとっとと終わらせよ」
ぼそっと独りごち、白金の髪を揺らがせて、彼は身を纏う風を勢いよく薙いだ。
.
「……はぁ、疲れた」
久しぶりに抑えていたユニーク魔法を行使して、些か疲れたルシアは、自室に戻ってため息をついた。
部屋の奥にあるベッドに腕の中の彼女を寝かせると、おもむろに枕元に頬杖をついて、ぷにぷにとその頬を堪能する。
「……お前、さ。ハーツラビュルにはもう、いないほうがいいよ」
ふと放たれた言葉。聞く者はいなくとも、彼は気にすることもなく言葉を紡ぐ。
「トラウマだろ、あんなことされたら。お前、あいつら見るたび今日のこと思い出すぐらいなら、さっさとまた転寮した方がいい。日を置かず、すぐにでも」
_____俺が烏野郎に言ってやろうか、なんて。
自分らしくもないことを考えて苦笑する。
「……ただな、サバナクローは論外で」
今日、あの場に降り立ったとき。不意に感じた剣呑な気配。十中八九、あのパーティーにはサバナクロー寮生が紛れ込んでいた。
「何をする気だったのかは知らないけど、あの感じ、並大抵の執着じゃないなアレは」
変なもの呼び寄せてんなよ、馬鹿野郎。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2181人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ツイステ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みかん(プロフ) - ルシア君ﾏｼﾞﾃ好きぃ…。天才ですか！？ (2022年12月18日 23時) (
レス) id: 35aefc2ecc (このIDを非表示/違反報告)
美咲(プロフ) - マジ、ルシア君殺さないでぇ……。まだ、続き見てないけど…。まだ、先見てないのに号泣すぎてやばい。。 (2020年10月25日 22時) (レス) id: f6fdf86c66 (このIDを非表示/違反報告)
アホの化身 - 君が泣くなら私も泣く、ってどうゆう脅しよ。 (2020年10月18日 15時) (レス) id: 62410cc231 (このIDを非表示/違反報告)
ラム - 夢主人公のイメージイラストが見てみたいです (2020年10月16日 17時) (レス) id: 2a665cb182 (このIDを非表示/違反報告)
Airu(プロフ) - 53話マジックペンではなくマジカルペンでは？ (2020年10月14日 11時) (レス) id: a37b93bc71 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白桜 | 作成日時：2020年9月3日 21時
