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誕生日当日になった瞬間に祝ってやろうと思って、サプライズで尋ねた彼の家。
あとちょっと。
カウントダウンをして楽しく待っていた昨日。
零時に針が重なった時。
ふと、友の体がなんだか薄いなと感じた。
満面の笑みを自分に向けた友は、おそらく自らが消えていくのも分からずにこの世からいなくなった。
青年も分からない。混乱して、戸惑っていた。
何故友が今隣にいないのか。この苦境を、支え合って乗り越えてきた相棒の姿が、何故このめでたい日に、目の前にいないのか。
名を呼んでも、家中を探しても、いない。
苦しくて堪らなくて、息をするのもままならず、青年はこの日のために用意した大切な飯を地面に落とした。
だが、どうでもいい。
何故、何故友は消えたのか。その疑問だけが、ぐるぐると頭を駆け回って吐き気を催した。
______ふと。
本当に偶然に、二、三年前の出来事を思い出した。
それは、まだ大人達が生きていた頃。
自分達がまだ無邪気に甘えていられた頃。
一つの家族が、一族に殺された。
彼らは魔力の少ない赤ん坊を産んだとして、蔑まれて処刑されたのだ。
自分達は事後報告を受けただけだが、その残虐さに家族も眉を潜めたことを思い出す。
青年となっていたその子は、愛する家族を殺されたことで気が狂い、一族を呪ったという。
……いや、正確には彼が愛していたのは家族ではなく妹のみなのだが、それは青年に知る由はない。
______そうだ、呪ったのだ。
その彼は、自分達一族を。何故か一族はそんなに気にしていなかったが、この状況は間違いなくその呪いのせいだろう。
なんだ?なんの呪いだった?
思い出せ、思い出せ。
顔を顰めて頭を捻って、記憶を掘り起こす。
______そうだ。
“魔力が増え続ける呪い”
そういえば、別に土を改良したわけでもないのに、作物の実りが急激に良くなっていった。
それは、並外れた自分達の魔力が、この土地に影響を与えていたからではないか。
しかも、しかもだ。
その青年が死んだのは、彼の丁度十八の誕生日ではなかったか。
ぞっ、と背筋が寒くなった。
もし、呪いをかけた彼が、一族郎党自分と同じ十八の誕生日に死ぬようにしたのなら、友がこの日に死んだのも、大人達が次々と死んでいったのも納得できる。
とっくに十八を過ぎていた彼らは、猶予さえもなかったのだろう。
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蒼(プロフ) - あばばばばばばば()ルシアくんをめでたい… (5月26日 22時) (レス) @page32 id: 699f0917a9 (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - 面白いです!ルシア君養ってあげたい。 (2022年12月18日 23時) (レス) id: 35aefc2ecc (このIDを非表示/違反報告)
ゆり - 最近見ていなくて今気ずきました。期限が過ぎてしまっていますがヤンデレ最高なのでそのままがいいです! (2021年2月8日 22時) (レス) id: ea414cb9ae (このIDを非表示/違反報告)
マザーグース(プロフ) - リクエストなのですが、「呪いが作用するのはツイステの世界のみだった」ということで夢主ちゃんの世界へ二人でいき、幸せになるというifストーリーが読みたいです。お願いします! (2020年11月6日 0時) (レス) id: 446891bd7a (このIDを非表示/違反報告)
白桜(プロフ) - でーたしょうじょさん» 常々やる気のでるコメントをありがとうございます。皆様私では思いつかないストーリーを考えてくださる笑面白そうなので是非書いてみたいと思います。 (2020年10月28日 8時) (レス) id: 33d5312230 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白桜 | 作成日時:2020年10月26日 20時