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訝しげな目を向ける青年に、友は言う。
赤ん坊しかいなかった、親がいなくなったんだろう、俺たちで育てるしかない、と。
青年は驚き、困り果てた。
“でも、俺赤ん坊の育て方なんて知らないぜ”
友は言った。
“大丈夫、俺が知っている”
そして彼らは集落中の赤ん坊をかき集めると、まだ消えていない子供達を集め、意を決して言った。
“この集落に、もう大人達はいなかった”
子供達は驚き、もう会えないのかと悲しんだ。
“だが、今日からは俺たちが家族だ。いつ誰が消えようとも、俺たちは強く前を向かなければならない。いいか?俺達で生きていくんだ!”
覚悟を決めた青年の言葉は、子供達の胸に深く響いた。もう自らの世話が出来る者も、出来ない者も、まだ泣き喚くしか出来ない者も、皆家族。
助け合わなければ生きては行けないのだと、その時彼らは悟ったのだ。
さて、それからが大変だった。
何せまだ体が出来上がっていない者たちだ。大人達がやっていた農耕を思い出しながらやってみるも、上手くいかないことが多かった。
一番困ったのは冬が巡ってきた時だった。
農耕が上手くいかない故に、食べ物が少ない。母がいないので赤ん坊に飲ませる乳もない。
どうにかこうにか家々からかき集めてきた牛乳を飲ませ、冬を乗り越えた。
が、子供達はいかんせん人数が多かった。
食べ盛りの者たちがお腹いっぱいに食べられないのは当然のこと、年長者の者は小さい子供達がお腹空いたと泣き喚くのを慰めるのにも神経を使った。
ある日。
一人、女の子が亡くなった。
栄養失調だった。比較的年が上だった彼女は、いつも自分の飯を年下の子に与え、宥め、夜泣きの赤ん坊をあやして睡眠さえろくにとれていなかった。
痩せ細り、頬がこけても、彼女は大丈夫だと笑って言った。
______大丈夫じゃ、ないじゃないか。
青年は悔しさに涙した。密かに彼女に想いを寄せていた友は呆然自失になっていた。
そんな生活が続き、それでも一年経てばどうにか生活出来るほどにはなっていた。
農業のコツも掴み、まあまあ子ども達に飯を食べさせられる程度の生活水準を達成しつつあった。
“なあ”
ふと、隣で実った田畑を眺めていた友が言った。
“明日、俺の十八の誕生日なんだ。祝ってくれるだろ?”
青年は当たり前だと笑った。
それなのに。
友は、誕生日になった瞬間、目の前で消えていった。
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蒼(プロフ) - あばばばばばばば()ルシアくんをめでたい… (5月26日 22時) (レス) @page32 id: 699f0917a9 (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - 面白いです!ルシア君養ってあげたい。 (2022年12月18日 23時) (レス) id: 35aefc2ecc (このIDを非表示/違反報告)
ゆり - 最近見ていなくて今気ずきました。期限が過ぎてしまっていますがヤンデレ最高なのでそのままがいいです! (2021年2月8日 22時) (レス) id: ea414cb9ae (このIDを非表示/違反報告)
マザーグース(プロフ) - リクエストなのですが、「呪いが作用するのはツイステの世界のみだった」ということで夢主ちゃんの世界へ二人でいき、幸せになるというifストーリーが読みたいです。お願いします! (2020年11月6日 0時) (レス) id: 446891bd7a (このIDを非表示/違反報告)
白桜(プロフ) - でーたしょうじょさん» 常々やる気のでるコメントをありがとうございます。皆様私では思いつかないストーリーを考えてくださる笑面白そうなので是非書いてみたいと思います。 (2020年10月28日 8時) (レス) id: 33d5312230 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白桜 | 作成日時:2020年10月26日 20時