29 ページ30
.
「______本、ですか？」
『そ、お前言ったでしょ。俺が入学したらなんでも知ることのできる本やるって』
「……そんなこと、言いましたかね。というかもう夜なのですが」
学園長室。
目の前で口笛吹きながらすっとぼけるクソやろうにピキッと俺の青筋が立つ。
へぇ。そーいうこと言うんだ。へぇ。
『………そういえば俺最近力が有り余っててさ。うっかりお前ぶっ飛ばすかも』
「今思い出しました！そうでしたそうでした！はい、どうぞ！」
ぽん、と慌てて手渡されたのは青い表紙の分厚い本。思ったより軽いな。
『交渉成立。じゃ』
「あ、ちょっと待ってください」
ゴソゴソと何やら漁っている音に振り向けば、烏野郎は引き出しの奥から銀色に光る腕輪を取り出した。
『……？何それ』
「ユニーク魔法抑制の腕輪です。正確に言えば魔力抑制ですが。これをつけている間は魔力が多少は収まりますよ。最近苦情が来てましてね。ユニーク魔法が効き辛いと」
『……それはそれは』
皮肉げに肩を竦めれば、烏野郎は少し眉を顰めて腕輪を俺の手首に嵌めた。
「……これを外さないように。それだけは徹底してください」
『分かったよ、それじゃあな』
俺は軽く返事をして、今度こそ烏野郎に背を向けて部屋を出た。
.
月明かりが照らす静かな廊下を歩きながら、俺は口の端を釣り上げて笑う。
『______なぁにお前。俺のファンなの？』
その瞬間、俺を照らしていた月の光が陰った。
俺を包むそのツノが生えた特徴的な影に、俺は振り返って目を細める。
そこにいたのは、白皙の美貌に冷徹な瞳を持つ高貴なるお方。
『おやおや、マレウスサマじゃないですか。こんな時間に、俺如きになんの用です？』
口を歪めて笑えば、そいつは不満げに俺を見下ろした。
「……何故、ディアソムニアを拒絶した」
いや俺。質問してるの俺。
軽くため息をついて、俺はうーんと考える。
魔法に長けた妖精族のマレウスやリリアは俺より先にディアソムニアに分類されていた。
それなのに、何故二人のいるディアソムニアに来なかったのかとどうやらマレウスは不満に思っているらしい。
まぁこうして聞いてこられるのは想定内。マレウスじゃなくてリリアが来ると思ってたけど。
リリアが来れば面倒くさかったけど、マレウスなら接点も少なかった分軽く誤魔化せるだろ。
『二人から離れてみたかっただけですよ』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 676人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蒼(プロフ) - あばばばばばばば()ルシアくんをめでたい… (5月26日 22時) (
レス) @page32 id: 699f0917a9 (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - 面白いです！ルシア君養ってあげたい。 (2022年12月18日 23時) (レス) id: 35aefc2ecc (このIDを非表示/違反報告)
ゆり - 最近見ていなくて今気ずきました。期限が過ぎてしまっていますがヤンデレ最高なのでそのままがいいです！ (2021年2月8日 22時) (レス) id: ea414cb9ae (このIDを非表示/違反報告)
マザーグース(プロフ) - リクエストなのですが、「呪いが作用するのはツイステの世界のみだった」ということで夢主ちゃんの世界へ二人でいき、幸せになるというifストーリーが読みたいです。お願いします！ (2020年11月6日 0時) (レス) id: 446891bd7a (このIDを非表示/違反報告)
白桜(プロフ) - でーたしょうじょさん» 常々やる気のでるコメントをありがとうございます。皆様私では思いつかないストーリーを考えてくださる笑面白そうなので是非書いてみたいと思います。 (2020年10月28日 8時) (レス) id: 33d5312230 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白桜 | 作成日時：2020年10月26日 20時
