ナンセンス〇〇 (ページ9)

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パパラチアサファイアページ9

ご飯は三食貰える。

夜は白いシーツの上で寝れる。

お湯にも浸からせてくれる。

穴も汚れもない服を着れる。

人間としての権利や自由を認められず、他人の私有財産でしか
無い私の身分を考えると過ぎたくらいに良い環境だった。

また、たかが愛玩物にここまで世話を焼いてくれる今のご主様
は稀で、同時にかなりの変わり者だ。

そして、ことあるごとにプレゼントを買ってきては私に与え、
猫可愛がりに拍車がかかってきた最近のご主人様はとてつも
ない変わり者だ。

今までだって大切にされてはいたけど、それは飼い猫に対する
愛情と同じベクトルであって構っているといった感じ。

いわゆるフェイバリットだ。

でも、ここ最近向けられている感情はそれとは別物な気がする。

そういえば、近頃は目を観察される事も無くなった。

何が起こっているのか、と今しがた貰ったリップ？という物
をしげしげと眺めているとソファーの表面が右側に引っ張られ
るのが分かった。

『使い方分かりマス？』

顔を左右に振って応える。

正直なところ、何に使うのか見当もつかず持て余していたところ
だった。

そうでしょうネェ、とヒョイと指の間からリップを摘み上げ
上品なケースを取り外す。

可愛らしいピンク色が顔を出す。

『コーラルピンクって言うんデスヨ。』

綺麗デショウ？と言われると同時にスッと顎を掴まれ上を
向かされた。

ご主人様が何をしているのかとんと分からなくて、でも今までの
経験からキスされるのかな、と思ってほとんど条件反射で目を瞑
る。

それからキスするのにはちょっと長い時間が経って、間違った事
をしたのかもと不安が生じた時やっと唇が重なる感触がして、少
し安心しながら目を開けた。

『キスしたかったんデスカ？』

『...え』

したかったのはそっちではないのか、と戸惑う私と相変わらず
ニヤニヤ笑っているご主人様。

『アナタの唇に塗ってあげようと思ったんですけどねェ』

そう言って右手のコーラルピンクを示すご主人様に私は、自分が
とんでもない勘違いをしている事にやっと気がついた。

リップというのは唇に色をつける物で、ご主人様はそれを塗ろう
としたわけで、それを私はキスでもするのかと思ってしまって...

『まァ、塗った後はできなくなっちゃうので好都合なんですケド』