第53話 ページ3
.
「…あのね、A。
今後の事なんだけど、お母さんが仕事増やして働く
から心配しなくても大丈夫だからね」
お母さんはそう言って、私を安心させるように
微笑んだ。
1週間で頬はこけて、やつれているお母さん。
そんな状態で仕事量増やしたら、倒れる。
お母さんまでもいなくなったら、私は。
「……いい。私も働くから」
「でも、受験生なのよ。
せめて大学に合格するまではお母さん頑張るから…」
「勉強しながらでも働ける。
お母さんばっかりに迷惑はかけられない」
「A………」
お母さんは、悲しげに目を伏せた。
私は、許されないことをした。
お母さんの愛する人を奪った。
だから、償わなきゃ。
お母さんを、守らなきゃ。
愛したお父さんは、もうどこにもいない。
お母さんを守れるのは、私だけ。
私を憎んでくれたって、恨んでくれたって。
殺してくれたって構わない。
それぐらいの事をした。
でも、でも。
お母さんに辛い思いさせるのは、もう二度と嫌だ。
だから、せめて。
……私に、お母さんを守らせて。
.
.
それから、私はすぐに志望校を決めて勉強を始めた。
上手くいかなかった、とか。
そんなものは捨てた。
私はもう、何も望んではいけないから。
幸せになることなんて駄目だから。
今の学力でも入れる大学を選んで、勉強しながら
バイトに励む毎日。
しんどかった。
肉体的にも、精神的にも。
でも、お父さんが味わった痛みに比べれば。
こんなの、どうってことない。
私は機械のように、その生活を繰り返した。
.
時々、死にたくもなった。
私が死んだら、お父さんが戻ってくるんじゃないかって。
そんな事を考えた日もある。
学校の屋上から、下を見下ろす。
高くて、落ちたらすぐに死ねると思った。
でも、出来なかった。
死ぬのが怖くなった。
こんなに怖いのに、お父さんは死んだ。
…ねぇ、お父さん。
救急隊員にアイスを渡した時、何を思ってたの。
どんな思いで、渡したの。
何度考えても、分からないの。
酷いこと言った私に、いつものようにそうやって。
アイスを買ってきたお父さんの事が。
こんな、娘のために。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 290人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
森下 衣舞(プロフ) - あいさん» あいさん泣 いつも有難うございます！私も感動系、切ない系が好きなので喜んでもらえて何よりです泣 更新お待たせしてしまって、本当に申し訳ないです…。引き続き頑張ります！お体に気をつけて下さいね！！ (2020年5月14日 22時) (
レス) id: 45654b5508 (このIDを非表示/違反報告)
あい - 第2弾ありがとうございます(T_T)涙が止まりません( ；∀；)感動物語凄く好きなんですよ。だから得しかなくて(T_T)続き楽しみにしております。お体に気を付けて更新頑張ってください！ (2020年5月10日 9時) (レス) id: 17b64cad63 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：森下 | 作成日時：2020年5月7日 0時
