第65話 ページ15
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それから始まった、苦しい日々。
私も。
そしてお母さんも。
毎日を必死に生きるので精一杯だった。
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深夜。
疲れが溜まって寝ていた私に、家の固定電話の音が鳴り響く。
画面に映ったのは、見知らぬ番号。
…こんな深夜に、誰なの？
恐る恐る電話を取る。
「…はい、もしもし」
『…ペク・Aさんですか？』
中年の男性のような、落ち着いた声色が聞こえた。
…待って。
私はこの人のこと知らないのに。
どうして、見知らぬ人が私の名前を…？
「えっと、どなた…？」
『…私は警察の者です。
先程、貴方のお母様を保護しました。
どうやら、家への帰り道が分からずにずっと徘徊していたようです』
「え……？」
思考が、真っ白に染まる。
『家の電話番号をお聞きしたので、お電話を掛けさせていただきました。
ちょっとパニック状態になっていますが…』
「……む、迎えに。迎えに行きます…」
声が上擦る。
訳が分からなかった。
「おやすみ」と言って、お母さんは寝室に入ったのを私は見届けていたのに。
そこから抜け出して、この深夜ずっと歩いてた…？
家への帰り道も、分からずに？
考え込んでいる場合じゃない。
とにかく、お母さんを迎えに行かなきゃ。
保護された交番の場所を聞いて、私は家を飛び出した。
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交番に着くと、おじさんの警察官と見慣れた後ろ姿が目に入る。
「お母さん！！！」
私が叫ぶと、お母さんが振り返る。
そして私に飛びつくように抱きついてきた。
「ごめんなさい…、ごめんなさい…。
お母さん、家の道が分からない」
泣きながら謝るお母さんの背中をさする。
怪我とかはしてないみたいで、良かった…。
…けど。
「……ペクさん。
お母様はもしかして…」
警察官のおじさんが、遠慮がちに聞いてくる。
聞きたいことは、何となく分かってる。
「…母は、若年性アルツハイマーです」
私が静かに告げると、警察官は悲しげに眉を下げた。
「…長く警察官をしているとね。
よく、こういう事があるからね…」
「…………」
沈黙が訪れた。
響くのは、お母さんのすすり泣く声だけ。
何も、考えられなかった。
それでも私は、守らなきゃ。
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森下 衣舞(プロフ) - あいさん» あいさん泣 いつも有難うございます！私も感動系、切ない系が好きなので喜んでもらえて何よりです泣 更新お待たせしてしまって、本当に申し訳ないです…。引き続き頑張ります！お体に気をつけて下さいね！！ (2020年5月14日 22時) (
レス) id: 45654b5508 (このIDを非表示/違反報告)
あい - 第2弾ありがとうございます(T_T)涙が止まりません( ；∀；)感動物語凄く好きなんですよ。だから得しかなくて(T_T)続き楽しみにしております。お体に気を付けて更新頑張ってください！ (2020年5月10日 9時) (レス) id: 17b64cad63 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：森下 | 作成日時：2020年5月7日 0時
