第61話 ページ11
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その日から、何もかもが少しずつ狂っていった。
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美味しかったお母さんのクッパの味が変になった。
「作り方を忘れたから」と言って笑ってた。
私に「今日は何日？」と聞くようになった。
突然お母さんが泣き出すことが増えた。
物を忘れる事が多くなった。
「あんたが盗んだ」と責められる事があった。
同じことを何度も聞くようになった。
仕事に遅刻することがあった。
お母さんが何を話してるのか分からない事があった。
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「…若年性、アルツハイマー……」
夜中。
ベッドに篭る私のスマホに写った文字。
お母さんがおかしいことなんて、分かってる。
だけど、知るのが怖くて。
知ってしまったら、もうお母さんがお母さんじゃ
なくなってしまう気がして。
…もしかしたら、そうなんじゃないかって。
勘付いていたから。
アルツハイマーなんじゃないかって。
確証は持てない。けれど、
お母さんは、何か変わった。
それだけは分かる。
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「…お母さん」
味の濃い晩ごはんを食べながら、お母さんを見つめる。
お母さんはニコニコしながら首を傾げた。
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「……病院に行こう？」
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沈黙が訪れた。
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早ければ。
発見が早ければ治療も早く受けられるかもしれない。
まだ、そうとは決まったわけじゃない。
けれど、怖いの。
このままじゃ、お母さんがお母さんじゃなくなる。
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「……親をバカにするのはやめなさい」
お母さんは私を冷たく突き放す。
「今はご飯の時間よ。
静かに食べて」
そう言って、料理を口に運ぶ。
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…それも、違うじゃない。
いつもなら、もっと優しい味付けで。
ほっこりするような味で。
思わず頬がゆるむほどの美味しさなのに。
今日のご飯は、全部味が濃くて。
「味が濃いものは苦手」と言ってたお母さんは。
…どこに、消えてしまったの？
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「……違うよ。
私はお母さんのために言ってるの」
お母さんの見たこともないような鋭い目が、私に
刺さる。
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森下 衣舞(プロフ) - あいさん» あいさん泣 いつも有難うございます！私も感動系、切ない系が好きなので喜んでもらえて何よりです泣 更新お待たせしてしまって、本当に申し訳ないです…。引き続き頑張ります！お体に気をつけて下さいね！！ (2020年5月14日 22時) (
レス) id: 45654b5508 (このIDを非表示/違反報告)
あい - 第2弾ありがとうございます(T_T)涙が止まりません( ；∀；)感動物語凄く好きなんですよ。だから得しかなくて(T_T)続き楽しみにしております。お体に気を付けて更新頑張ってください！ (2020年5月10日 9時) (レス) id: 17b64cad63 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：森下 | 作成日時：2020年5月7日 0時
