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達也の言葉に心当たりがある摩利は、「あぁ、」と思い出したように言う。

「1-Aの森崎駿のことか。
彼なら教職員推薦枠で風紀(うち)に入ってもらうことにした。」
「えっ」

あっけからんと言われた言葉に、達也の手から力が抜けていった。
達也の手に握られたCADが机に落ちてしまう前になんとかAが慌ててそれを受け止めて、安堵の息を吐く。
しかし、Aも内心穏やかではなかった。

森崎が風紀に入るなど、思ってもみなかったのである。

「君らでも慌てることはあるんだな」

物珍しそうに言う摩利に、Aは失礼ながら呆れたため息を漏らした。
ニヤっと笑う目の前の上級生は、自分たちのことをなんだと思っているのだろうか。
なんて、思いながらAは達也にCADを手渡した。

達也はそれを受け取り、一言「すまない」とだけ謝罪した。

「まぁ、森崎は昨日騒ぎを起こしたんで推薦を取り消すことはできるし、実際そうするつもりではあったんだが…。
君らも昨日の件では無関係ではないだろう?」
「…むしろ当事者と言いますか…、喧嘩を売られた側と言いますか、」

昨日の騒ぎを思い出してAは軽くこめかみを抑える。

「そういうことだ。
自称当事者の君らをスカウトしているのに、彼を断るわけにもいかないだろう?」

理屈としては理解できる。
騒ぎを起こした一科生の推薦は取り消し、もう片方である二科生は委員長自らの形でスカウトしたなど、新たな火種にしかならない。

「もういっそ、三人まとめて入れない、というのはどうですか?」
「嫌なのか?」

随分ストレートに聞いてくるわね、と思いながらAは達也を見上げる。
その際摩利の顔も見えたが、その目は笑っていなかった。

「…正直、面倒だとは思います。」

観念したように、達也は続ける。

「ですが、今更引き下がれないとも思っていますよ。」

摩利を見据えて言う達也に、摩利は満足げにニンマリと笑う。
そうして、次に摩利はAを見やった。

「…それで、君はどうする?達也くんはやる気だぞ?」

挑発するような摩利の視線と言葉に、Aは内心諦めにも似たため息をついた・

「…もちろん、私も風紀委員に入ります。
ここまできて引き下がれないのは、私も同じですから。」

そう言って覚悟を決めれば。
摩利はより一層、満足げに笑う。

「…改めてようこそ、風紀委員会へ。」
「…よろしくお願いします。」

摩利に改めて歓迎の言葉を口にされ、二人揃って、そう言った。

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- 早く続きが見たい (12月18日 20時) (レス) @page35 id: d8cab8ae04 (このIDを非表示/違反報告)
華奈(プロフ) - 更新楽しみに待ってます♪ (2021年11月25日 23時) (レス) @page22 id: 45dc289628 (このIDを非表示/違反報告)
asukamte9(プロフ) - 乃さん» ありがとうございます。執筆頑張ってるので、もうしばらくお待ちください! (2021年1月24日 22時) (レス) id: 7e8a231f5c (このIDを非表示/違反報告)
- 進み具合はどうですか?とても楽しみにしています! (2021年1月24日 22時) (レス) id: 9c037e67a7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ねむ | 作成日時:2020年10月5日 20時

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