29 ページ29
最も、達也が注意を向けていたのは室内全体の整頓状況ではなく、目の前の机の上に置かれていた雑多な荷物だった。
｢それはそうと…委員長、ここを片付けても良いですか？｣
｢何…？｣
達也の突然の申し出に、摩利は片眉を顰めて意外感を示した。
─…案外、芝居っ気の多い先輩である。
｢魔工技師志望としては、CADがこんな風に乱雑に放置されている状態は耐え難いものがあるんですよ。
サスペンド状態でほったらかしになっている端末もあるようですし。｣
そんな摩利の態度にもお構いなしに、達也は先ほどと変わらぬ様子を見せる。
その二人を見ながら、これまで口を挟まなかったAが不意に口を開いた。
｢私も手伝うわ、達也。
…まぁそもそも、魔工師の生命線であるCADをこんなに乱雑に扱わないでほしかったですけど。｣
ぽつりと嫌味を呟いてしまったが、それはご愛嬌という事である。
この嫌味は二人に聞こえていたらしい。
達也は横目にAを見るだけだったが、摩利は苦笑いを浮かべたあと先ほどの達也の言葉が気になったのか｢魔工技師？｣と本気で驚いた様子を見せた。
｢あれだけの対人スキルがあるのにか？｣
“あれだけの”、というのは先ほどの服部との勝負のことを指しているのだろう。
確かに摩利が驚くのも無理はない。
先ほどの試合は一見あっさり終わったようで、その実とてつもないほどの高等な対人戦闘技術が使用されていたのだ。
｢俺の才能じゃ、どう足掻いてもC級のライセンスぐらいしか取れませんから。｣
しかし、達也は他人事のように淡々と自虐的な回答を摩利に返した。
摩利はその言葉に反論しようとしたのだろう。
だが、言葉を紡げなかったらしい摩利は何度か口を開閉させただけだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 767人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
零 - 早く続きが見たい (12月18日 20時) (
レス) @page35 id: d8cab8ae04 (このIDを非表示/違反報告)
華奈(プロフ) - 更新楽しみに待ってます♪ (2021年11月25日 23時) (レス) @page22 id: 45dc289628 (このIDを非表示/違反報告)
asukamte9(プロフ) - 乃さん» ありがとうございます。執筆頑張ってるので、もうしばらくお待ちください！ (2021年1月24日 22時) (レス) id: 7e8a231f5c (このIDを非表示/違反報告)
乃 - 進み具合はどうですか？とても楽しみにしています！ (2021年1月24日 22時) (レス) id: 9c037e67a7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ねむ | 作成日時：2020年10月5日 20時
