・ ページ29
・
・
『照とは、いつから？』
『ここで知り合ったのよね？』
『あなたから告白したの？』
個室に入ってからの彼女は
面白いほどに質問攻めしてきた。
「すみません。業務中なので、プライベートの事は。」
その言葉を、呪文のように貫いた私に、ため息をついて。
『私たちね、高校の同級生なの。
あの頃から同じような世界で仕事してたし、気が合ったのよね。』
知ってるよ、そんなの。
スマホで岩本照って検索したら
あなたの名前がすぐ横に並ぶんだもん。
芸能人のプライベートは、調べればすぐにわかっちゃうって
身をもって知ってる。
だからこそ、私は照くんとのことは一切口外しないって決めてる。
『大人になってから付き合い始めたんだけど、私の仕事の方が先に軌道に乗っちゃって。』
それも知ってる。全部、全部スマホが教えてくれたよ。
だから、わざわざ言わないで。
なんていう度胸もなく、ただただ、顔から表情を消して
彼女の言葉を聞き流すだけ。
『別れた事、今でも後悔してるの。
照は”別れたくない”って言ってくれてたのに。』
ああ。それは知らなかったし
一番聞きたくなかったことだな、と思いながらも
平常心。で、いなくちゃ。
『そろそろ返してくれない？私もいい年齢なのよ。
女としても。あなた、照よりも若いわよね？』
聞き心地のいい、トゲのない穏やかな、声。
照くんも、この人の声に癒されてたんだろうか。
”別れたくない”と言いたかったぐらいには
好きで好きで、仕方なかったんだろうな。
でも今は。
なんて反論したとしても
きっと勝てない。
照くんと彼女が一緒に過ごした時間の長さや
共有した気持ちの多さ、今でも”好き”と思えるくらいの
想いの強さ・・・
なにより、彼女は
照くんが身を置く世界を、誰よりも理解していて
照くんの気持ちを、きちんとわかってあげられる人。
”私なんて。”
そう思えるには十分すぎて
”俺が好きなのは、Aだけだよ”
照くんの優しい顔が浮かんでくるけど
それには縋っちゃいけないような気持にさえなった。
それでも。
「業務中なので、その点にもお答えすることはできません。
申し訳ありません。」
頭を下げた時に
床にポタリ、と何かが落ちた。
それが私の涙だったってことは
彼女にはきっと、気づかれていないはずだ。
・
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 402人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
遥(プロフ) - アキネコ。さん» ありがとうございます🩷ご期待に応えらえる様、精進します！キリンの首で(え？)待っていて下さい！ウフフ♡ (11月5日 22時) (
レス) id: ebcf222aae (このIDを非表示/違反報告)
アキネコ。(プロフ) - 連続コメント失礼します！！『次回作では、カップルがひとつ、増えるかも....？』遥様のそんなお言葉に期待してしまっています…！しょった誕生日おめでとうですね。次回作も首を長くして待ってるつもりです！！！続編でも頑張ってください！！ (11月5日 22時) (レス) @page38 id: 1ef8943118 (このIDを非表示/違反報告)
遥(プロフ) - アキネコ。さん» ありがとうございます！気まぐれ更新なので、気長にお付き合い頂けると嬉しいです。ちゃーんと準備してますので💛もちろん、佐久間くんも🩷( *´艸`) (11月5日 21時) (レス) id: ebcf222aae (このIDを非表示/違反報告)
アキネコ。(プロフ) - 続・イチバンになりたいのウラ待ってます…(//> <//)佐久間担だけど、どの人も毎回楽しみにししています🩷更新ファイトです！応援してます！ (11月5日 15時) (レス) @page36 id: 1ef8943118 (このIDを非表示/違反報告)
みお(プロフ) - 遥さん» そうだったんですね😄了解しました❗️この話の続きも楽しみにしてますね🖤 (10月18日 22時) (レス) id: 60d138fccd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：遥
| 作成日時：2023年10月2日 17時
