13 ページ15
南沢Side
俺たちの勝利を告げるホイッスルのあとの興奮が少しさめてきた頃、監督から整列の指示が入った。
俺たちは勝った。
目の前で悔しそうな顔をする倉間を見て、口角が緩む。
「何にやついてるんですか、気持ち悪いです」
試合に負けてご機嫌斜めな倉間にはいはい、と適当にあしらい、髪をかきあげた。
“その癖直した方がいいですよ”と言う倉間の声も、今の喜びの前に消えてしまいそうだ。
Aさんが、来てくれた。その試合で勝てた。
その胸の高鳴りは、別にひとりの女性に抱くような感情の所為ではない。
なんだか、上手く表せないけれどとにかく嬉しい。
その気持ちの高ぶりが、今回の失敗を引き起こしたのかもしれない。
円堂監督の“少し話をしよう”という誘いに何の疑いもなく乗ってしまうという、失敗を。
「どうだ、ここの生活も慣れたか？」
「もう大分経ちますから。雷門も変わりないみたいで何よりです」
そんな会話からどういう過程を経たか、いちいち覚えてはいないけれどとにかくAさんの話になった。
「そう言えば、今日お前の姉ちゃんが来てたんだな」
「いや、Aさんは今うちの喫茶店で住み込みで働いている人ですよ。確かに俺の姉さんみたいな存在だけど、血は繋がってないです」
“それに、にてないでしょ？俺たち”と付け足せば、円堂監督は少し驚いたようにへえ、と呟いた。
「じゃあ、上の名前はなんて言うんだ？」
「涼野……涼野Aさんです」
そういった瞬間、確かに監督の動きが止まった。
それが一瞬だったか一分だったかは分からないけれど、とにかく止まったのだ。
「……そうか、ありがとう」
“長い間引き止めてごめんな”と言って、監督は雷門の方へ戻っていった。
「ありがとう……か」
いまいち意味のつかめないその言葉を、ぽつりと呟いてみた。
ありがとう、ありがとう……。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 54人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽんず。(プロフ) - 美優莉さん» 少しでもお役に立てれば幸いです。これからも頑張ります！ (2015年11月4日 20時) (
レス) id: 78ac36b467 (このIDを非表示/違反報告)
美優莉 - 教えてくれてありがとうございます。これからも頑張ってください!! (2015年11月4日 19時) (レス) id: 2714492d95 (このIDを非表示/違反報告)
ぽんず。(プロフ) - 東堂 悠莉さん» ど、どうされたんですか！？ (2015年10月30日 21時) (レス) id: 78ac36b467 (このIDを非表示/違反報告)
ぽんず。(プロフ) - 美優莉さん» コメントありがとうございます！そして、すごいグッドタイミングな質問です(笑)もうすぐ彼らについて書いていく予定なので、是非ともそちらで答えを確かめていただければと思います。もうしばらく、お待ち下さい！ (2015年10月30日 21時) (レス) id: 78ac36b467 (このIDを非表示/違反報告)
東堂 悠莉 - ぽんず。さん» や、やっと見つけた……ﾊﾞﾀｯ (2015年10月30日 19時) (レス) id: 8b0cd85cc9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぽんず。 | 作者ホームページ：http://ww.inago.@
作成日時：2015年9月4日 21時
