「文スト」俺には貴方さえいれば…「男主」「中/原/中/也」

またきっと明日がくる.42 ページ42

　
　
雨が降っている＿＿＿

　
「いつもその本を読んでるな。坊主。」


一人の男性がそう言った。


　「そんなに面白いか…」


男性がそう聞くと少年は答えた。


　「面白い。もう何度も読んでる」


すると、男性は少し鼻で笑ったように…


　「そんな話より面白い話が、
世の中には巨万とあるぞ。


その本、下巻はどうした。」


　「下巻はもってない。
　いくら探してもなかった。」


　「それで得心がいったわ…

　その小説は下巻がとんでもなく最悪でな。
　上巻と中巻だけで満足しておけ。それがお前のためだ。」


　「そうもいかない。」


　「ならばお前が書け。」


男性がそう言うと、少年は弾かれたように顔をあげた。


　「自分が、書く?」


　「それが唯一…その小説を完璧なままにしておく方法だ。

　小説を書くことは人間を書くことだ。
　どう生きて、どう死ぬべきかということをな。

　ワシのみたところ、お前にはその資格がある。」


　「貴方はいったい、誰なんです?」


　「ワシか?
　ワシの名は………」






雨の音が響いていた………

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