素晴らしく最低なこの世界.12 ページ12
「こんちわ……」
「あぁ…やっぱりまた今日も来ると思ってたよ…」
近場にある例の酒屋に顔を出すと、店主のおやっさんが苦笑いで迎えてくれた…
そして、また酒かね。と、聞かれた…
俺は、ただ気まずくて黙って頷いた。
「そろそろあの親父と縁を切ったらどうかね」
「…そうすると、行くとこなくなるんで…」
いつもそう言うが、結局言うだけのおやっさんは何もしてくれない…
何も出来ない…
でも、それは俺も同じ…
優しさが伝わる分…
何故か憎悪が静かに沸いている…
「ワシがもっと若かったなら…
また安くしとくよ…」
「本当にすみません…おやっさんにも生活が……」
「いや、何も出来ない年寄りの自己満足さ…
それより…お前さん……その腕の包帯…
昨日から気になっていたが、誰にやってもらったんだい。」
綺麗な巻き方だねぇ、と右腕を指差された…
綺麗な…という言葉に、別に俺がやった訳でもないのに、少し嬉しくなった。
「なかはらさんって、人が…
やってくれたんだ…」
「なるほど…優しい人間がまだこのあたりにもいたか…
お前さんに、そんな顔をさせるとは。」
「顔は怖いんすけど…温かい人でした。」
そう言って少し笑うと、おやっさんは驚いた顔をした後に、ニッコリ笑った。
「そうか…
そんなに、優しいお人なら、お前さんを引き取ってくれるかもな…」
「無理っすよ。だってそういうのは児相とかうるせぇし。
それに……」
親父の顔が頭を過ぎった…
そして、また再び憎悪が溢れる。
おやっさんの時も…
結局、手を差し伸べられても、その手を取れない俺は…
「………やっぱり…こんな俺が…なかはらさんに迷惑かけられないし…
親父を一人には、出来ないと思うんで…」
優しさが伝わる分…
それに応えられない俺に嫌悪と憎悪…
結局…本当の最低は俺なんだ…
素晴らしく最低なこの世界.13→←素晴らしく最低なこの世界.11
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 494人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
優乃(プロフ) - お父さん最後の最後にとてもいい人で涙してしまいました…とっても好きですこの作品 (2017年3月14日 2時) (
レス) id: 125a7385c7 (このIDを非表示/違反報告)
夜深 - すごい感動できる作品ですね！ 続編のことまってます！ (2016年8月15日 14時) (レス) id: ced2c79383 (このIDを非表示/違反報告)
黒闇(プロフ) - 素晴らしい作品です！是非、続編お願いします！ (2016年6月27日 22時) (レス) id: 55dddb2e65 (このIDを非表示/違反報告)
沙夜(プロフ) - 完結おめでとうございます!!続編楽しみにしています!! (2016年6月26日 17時) (レス) id: 236ae9874e (このIDを非表示/違反報告)
朱白雪(プロフ) - 完結おめでとうございます!!続編期待してます!! (2016年6月25日 14時) (レス) id: 78c8136147 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：いないな | 作成日時：2016年5月21日 14時
