参 ページ4
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日暮れ。普段ならば身支度を整え、あちこち飛んで回っている時間帯だが今日は嬉しいことに非番だ。
束の間の休息を鍛錬に注ぎ込むほど、生憎私は力に困っていない。
屋敷の縁側で一人、手鏡を片手に己の顔を見つめる。血色の悪い顔に同じような白い髪。色素の薄い唇を隠すように塗った真っ赤な紅はとても不自然に映えている。
これも全ては日頃の不摂生が悪い。そんなことは分かっているが、直そうとしても何一つ変わらないのだ。
『……今日は寝れる。大丈夫よ。』
昼間もらった袋から取り出したものを口の中に含み、隣に置いてあった湯のみに入った白湯を流し込む。
少しの苦みが、口内を刺激した。
……睡眠薬。これがあっても寝れない日は沢山ある。今日は寝られる、大丈夫だと毎夜毎夜自分に言い聞かせ床に就くが結局寝れず気が付けば日をまたいでしまうということがしょっちゅうだ。
元より、しのぶのすすめで効き目が薄いものを選んで服用しているため致し方ない部分もあるが、それにしても以前となんら変わらないことに少し不満を感じる。
夢を見るのだ。昔の、嫌な記憶が夢となり寝ている私の脳を荒らす。
それに酷い恐怖を覚え始めた頃、私は己から眠ることをやめ、薬に頼り始めた。
だが、いくら飲み続けても夜はどこか不安になって床の中で丸まり、うずくまりながらやっと目を瞑る。
一度だけそれにしびれを切らし、しのぶに釘を刺されたことを思い出しながらも調合されたものより多く服用したことがある。
しかし眠るどころかその日は酷いめまいに襲われ、一日中どこか虚ろだと他の隊士に言われる始末だった。
飲まなくてもこの身が休まることはなく、たとえ飲んでもそれはあまり変わらない。長く服用するにつれ朝は早くなり、その分睡眠時間は変わらず短いまま。
昼は酷い倦怠感と、要らぬところで訪れる眠気と頭痛に悩まされる。
やめた方がいいのかと思ったこともあったが、心のどこかで意味無く欲してしまいやめられずに終わった。
だからダラダラと、こんな生活を続けているわけで。いくら経っても、顔と唇の血色は戻るはずが無い。
『……これじゃあまるで死人の顔ね。』
乾いた笑い声が、誰もいない屋敷の庭に消えていった。
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あるでんと(プロフ) - みぃさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて幸いです。ノロノロペースですが更新がんばりますね。ぜひこれからもよろしくお願いします。 (2020年2月24日 1時) (レス) id: 484fc6b4f6 (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - とても面白くこの作品が大好きです。自分のペースで更新頑張ってください (2020年2月23日 23時) (レス) id: d77d134be6 (このIDを非表示/違反報告)
あるでんと(プロフ) - そらねこ。さん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてなによりです、自分のペースにはなりますがこれからも更新頑張っていこうと思いますのでよろしくお願いします。 (2020年1月29日 14時) (レス) id: 484fc6b4f6 (このIDを非表示/違反報告)
そらねこ。 - すごく面白いです!無理せずに更新頑張ってください (2020年1月27日 23時) (レス) id: 660f048392 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あるでんと | 作成日時:2020年1月15日 23時