弐 ページ3
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蝶屋敷から出ると、そこにはお天道様がこれでもかと地を照らしている。眩しいその光に、目をきゅっとつむった時、背後からとある声が聞こえた。
「こんちには。」
振り向けばそこには、これまた綺麗に笑顔を浮かべる1人の少年の姿があった。鬼を連れた鬼殺隊士である彼の名はそう、竈門炭治郎といっただろうか。
鬼となった妹は、禰豆子だったはずだ。この間の柱合会議で彼が風柱と一悶着やっていたところをしみじみ思い出す。
こんな素敵な笑顔を浮べる子供があれほどまでに怒り狂う程だ。余程兄妹の絆が深いのだろう。
この二人について元より肯定派である私にとっては、あの男のように否定する理由が全く見つからない。
『こんにちは、竈門くん。柱合会議以来ね。傷の具合はどう?』
「はい、少しずつ良くなってきています!」
『そう、それは良かった。』
彼はありがとうございます、と言うと律儀に深いお辞儀をする。可愛らしい後輩。それが彼への第二印象になりそうだ。
しかし療養中の身にしてこんなにも動けるなんて。つくづく若さとは恐ろしいものだと思う。
自分がこのくらいの年の時ですら、これほどまでに元気ではなかった気がするが。
「Aさんはしのぶさんに用事があったんですか?」
『えぇ、少しね。』
不意に飛んできた質問に深く答えることなく、お得意の笑みでやり過ごす。
すると彼はどこか訝しげにしながらも、そうですかと話を切ってくれた。
生憎面倒な事は嫌いなので、これがなんだという説明なんて長ったらしくやっていられない。
そもそも、彼にそれをいちいち説明する必要性は何ひとつ無いのだ、初めから。
だから言わない。実に論理的だろう。
『じゃあまたいつか。機能回復訓練、頑張ってね。』
「はい!」
力強い返事のもと、足を進め始める。これで今日は屋敷へと戻りコレを飲めば一日は終わる。あぁ、夕餉を食べなければ飲めないのだった。
まぁそんなこと気にしたところで、今更何になると言うのか。医者からすれば気をつけてほしいところなのだろうが、服用者の私からすれば効力があれば正直どうでも良い。
いや、それは服用者の意見ではなく、あくまで私。一個人としての意見だが。
これを聞けばきっとまた、彼女は呆れたようにため息を吐くのだろうなと思うと、どこか少しだけ面白く感じた。
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あるでんと(プロフ) - みぃさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて幸いです。ノロノロペースですが更新がんばりますね。ぜひこれからもよろしくお願いします。 (2020年2月24日 1時) (レス) id: 484fc6b4f6 (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - とても面白くこの作品が大好きです。自分のペースで更新頑張ってください (2020年2月23日 23時) (レス) id: d77d134be6 (このIDを非表示/違反報告)
あるでんと(プロフ) - そらねこ。さん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてなによりです、自分のペースにはなりますがこれからも更新頑張っていこうと思いますのでよろしくお願いします。 (2020年1月29日 14時) (レス) id: 484fc6b4f6 (このIDを非表示/違反報告)
そらねこ。 - すごく面白いです!無理せずに更新頑張ってください (2020年1月27日 23時) (レス) id: 660f048392 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あるでんと | 作成日時:2020年1月15日 23時