拾肆 ページ15
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『……それで。珍しいですねぇ、あなたが私の屋敷にわざわざ出向いてくるなんて。』
なぜか文句を垂れながらも縁側に座る私の隣に腰を下ろした彼を横目に、至極簡潔な質問を投げかける。彼は一瞬動きを止めたが、またいつものようにこちらを眉間にシワを寄せ見つめてくる。
「病弱なお前を見物しに来ただけだァ…」
『はは。実弥さんは嘘が本当にへったくそですね。』
事実を述べただけの私の頭に、なぜだか鈍い痛みが走った。普段から気性が荒いで有名だが、まさか柱仲間である私をも殴ってくるとは。
じんじんと痛む頭頂をわざとらしく抑えながら、私はもう一度軽く笑う。
すると今度は鍛錬を重ねた上で鍛え上げられた無骨な手で私の色の無い頬がつねられる。
『あの、痛いんですけど。』
「なんだァ、てめぇも痛み感じるのか。」
つぐつぐ失礼な奴だなと思った。眠れず、食えずのこの体だってガタは来るし、それは人間だからゆえである。
人以外の者になれたらと願った数は計り知れないが、やはりなれなかったため人間であることには変わりない。
不意に頬から手が離れる。彼に加減などという言葉は存在しないため、まだ痛む頭頂部を差し置いて今度は頬を抑えることにした。
『配慮のはの字もないんですね、びっくりしました。』
「お前にくれてやる気遣いなんてあるわけねぇだろォがァ。」
『あー、そうですか。そうですね。』
今すぐにでもその足を踏み潰してやりたいがやめた。それは今度、彼と一緒に任務へ行く時にとっておこうと思う。
して、最初の質問をうまい具合にそらされた訳だが、いかんせん彼は堅物のため聞き出すのは至難の業である。
『……まぁ、あなたの事なので何か話しておくことでもあって来たのでしょうが。』
「……いや、特にねぇよ。」
『……は。』
ほぅ、これはまたまた珍しい。なんの気の迷いだ。この男が今何を考えているのかさっぱり分からない。
『……とりあえず、おはぎを食べましょう。』
同じく、取り乱した己も意味不明なことを口走っていた。
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あるでんと(プロフ) - みぃさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて幸いです。ノロノロペースですが更新がんばりますね。ぜひこれからもよろしくお願いします。 (2020年2月24日 1時) (レス) id: 484fc6b4f6 (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - とても面白くこの作品が大好きです。自分のペースで更新頑張ってください (2020年2月23日 23時) (レス) id: d77d134be6 (このIDを非表示/違反報告)
あるでんと(プロフ) - そらねこ。さん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてなによりです、自分のペースにはなりますがこれからも更新頑張っていこうと思いますのでよろしくお願いします。 (2020年1月29日 14時) (レス) id: 484fc6b4f6 (このIDを非表示/違反報告)
そらねこ。 - すごく面白いです!無理せずに更新頑張ってください (2020年1月27日 23時) (レス) id: 660f048392 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あるでんと | 作成日時:2020年1月15日 23時