捌 ページ9
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チリンチリンと、軒先にぶら下げてあった風鈴が風に揺れて音を立てる。今は晩夏。もうじき夏も終わりを告げる。
音は良いのだが、少し暑さも和らいだ近頃は時期外れに思えてきたので、外そうかと悩んでいた。
『……今日は昼なのに暗いわね。一雨くるのかしら。』
風鈴につられ縁側に出ると、どんよりとした厚い雲に覆われている薄暗い空が見えた。
初秋が近いのは嬉しいことだが、
じめじめと湿気を帯びて気持ちが悪いのは苦手なのだ。
『せっかく梅雨が過ぎたと思っていたのに、あっという間ね。』
毎日毎日退屈だと思っているうちに、だんだんと日は過ぎていく。
何かを楽しむどころか、楽しいと思えない私には、なんだかとても損しているように感じてしまう。
そしてまた憂鬱になり、の繰り返しだ。本当に、つまらない人生。
彼が早く私を喰ってくれないと、近いうちにどうにかなってしまいそうだ。
『……今日こそ、喰べてくれるかしらね。』
「んー、まだ喰わないよ。」
『……え？』
独り言のように呟いた言葉だったが、どこからかそれに対しての返答がきて驚く。
今は昼間だ。いくら日が出ていないといって、彼が来るわけがない。
それに、姿が無いじゃないか。きっと私の聞き間違いだ。
そう言い聞かせ、ふわりと揺れる風鈴に手を伸ばした。
「ねぇ、無視は酷くないかい？」
不意にぐいっと体を引き寄せられ、私は何者かの腕の中にすっぽりとおさまった。
その何者かは、もはや言わずとも分かるだろう。
『ちょっと……離れて。』
「俺のことを無視したのは君だろう？」
『こんな昼間に来るとは思わないもの、仕方ないじゃない。』
「こんな昼間に俺のことを呟いたのも君だ。」
顔を少し上に向ければ、背丈の高い彼の顔はしっかりと瞳に映る。それもまぁ、ご機嫌そうな笑顔でこちらを見つめている。
『……わかったわ。無視してごめんなさい。これでいいかしら。』
「Aが言うと本心と思えないの、不思議だね。」
『それ、少し失礼じゃない？』
「ははは、冗談だよ。」
昼間であっても、この鬼は自由らしい。こちらのことなんて何も考えず、本能のままに動く。
「あぁ、そうだA。」
『今度は何？』
「冗談ついでに、俺と街へ行こうか！」
『……却下。』
できれば少しくらい常識を身につけて欲しいと私は切に願った。
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あるでんと(プロフ) - ぱんさん» コメントありがとうございます。そう言ってもらえて嬉しいです。風邪は年末から年始にかけてすでにひいたので大丈夫だと思います笑 (2020年1月15日 23時) (
レス) id: 484fc6b4f6 (このIDを非表示/違反報告)
ぱん - とても面白いです！続きを楽しみにしてますが、すんごい寒いので体調に気をつけてくださいね！ (2020年1月14日 17時) (レス) id: 03bfdf54f9 (このIDを非表示/違反報告)
あるでんと(プロフ) - あさん» 童磨のキャラブレがとても心配だったので、そう言っていただけて嬉しい限りです。完結までは私のペースになってしまうと思うのですが頑張ろうと思っているので、これからもぜひ、よろしくお願いします。 (2019年10月27日 7時) (レス) id: ee9413cc7b (このIDを非表示/違反報告)
あるでんと(プロフ) - 狂狐さん» 返信遅れて申し訳ありません。勿体ないお言葉、本当にありがとうございます。とても嬉しいです。少しずつ更新していこうと思っているので、これからもよろしくお願いします。 (2019年10月27日 7時) (レス) id: ee9413cc7b (このIDを非表示/違反報告)
あ - 童磨さん最高です。すごく面白かったです、これからも応援させていただきます。 (2019年10月24日 17時) (レス) id: 87b58a18e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あるでんと | 作成日時：2019年7月20日 15時
