伍 ページ6
·
しばらく自室で待っていると、湯浴みを終えた彼が戻ってきた。きちんと、着物は私が用意した客人用の物を着用している。
『ん、大丈夫ね。もう匂いはしないわ。』
「そんなに血の匂いが嫌いなら、言ってくれれば良かったのに。」
『まさか喰いあさってからここに来るなんて、思わないもの。』
血が着いた服でそのまま人の家に来るあたり、やはり人間離れしているなと思う。
『それで、どこで喰ってきたの。』
「興味があるのかい？珍しいね。」
『……興味、なのかしらね。』
この鬼は、こんな山の
鬼は普段どこでどのように生きているのかを、知ってみたかったのだ、昔から。
「んー、今日は
『花街って遊郭じゃない。わりと遊びが激しいのね。』
「酷いなぁ、その目。遊郭は鬼に都合が良いんだよ。夜の街。いかにも鬼らしいだろう？」
『……あなたの腹に入った遊女も不憫だわ。』
「なんだい、今日はやけに冷たいね。」
『気の所為よ。』
遊女屋が集まる遊郭、花街は確かに夜の街だ。遊女は買われ、一夜限りの夢を見ず知らずの男に見せてやる。言わば、偽りの愛を演じる場所。
そんな娯楽の店に鬼が潜んでいると思うと少しゾッとするが、理にはかなっている。
『あなた以外にも、花街には鬼が来るの？』
「そうだね。脳ある鬼は、来るだろうけど。」
私の質問に、隣に胡座をかいて座る彼は淡々と答えてくれる。
私自身、なぜこんなことを聞いているのかと思いながらも、ほんの少しだけ心が踊っているように感じる。
人間の口からは決して語られない、人ならざる者の真実。
それは酷く恐ろしいものなのに、不思議と聞き入ってしまうのだ。
『鬼の話なんか聞いて、私は本当に腐ってしまったのかしら。』
「そこがAの魅力的なところなんだけどね。」
『……なんだろう、それは嬉しくないわ。』
「せっかく褒めたのに？」
そう言って首を傾げる彼のことがなんだかおかしく感じて、気付けばふふっと、私は鼻を鳴らして笑っていた。
·
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1227人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あるでんと(プロフ) - ぱんさん» コメントありがとうございます。そう言ってもらえて嬉しいです。風邪は年末から年始にかけてすでにひいたので大丈夫だと思います笑 (2020年1月15日 23時) (
レス) id: 484fc6b4f6 (このIDを非表示/違反報告)
ぱん - とても面白いです！続きを楽しみにしてますが、すんごい寒いので体調に気をつけてくださいね！ (2020年1月14日 17時) (レス) id: 03bfdf54f9 (このIDを非表示/違反報告)
あるでんと(プロフ) - あさん» 童磨のキャラブレがとても心配だったので、そう言っていただけて嬉しい限りです。完結までは私のペースになってしまうと思うのですが頑張ろうと思っているので、これからもぜひ、よろしくお願いします。 (2019年10月27日 7時) (レス) id: ee9413cc7b (このIDを非表示/違反報告)
あるでんと(プロフ) - 狂狐さん» 返信遅れて申し訳ありません。勿体ないお言葉、本当にありがとうございます。とても嬉しいです。少しずつ更新していこうと思っているので、これからもよろしくお願いします。 (2019年10月27日 7時) (レス) id: ee9413cc7b (このIDを非表示/違反報告)
あ - 童磨さん最高です。すごく面白かったです、これからも応援させていただきます。 (2019年10月24日 17時) (レス) id: 87b58a18e6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あるでんと | 作成日時：2019年7月20日 15時
