肆 ページ5
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夜は好きだ。髪を撫でる夜風は涼しく気持ちが良いし、空には月が美しく輝いている。
そんな夜も老けた中、いつもの様に縁側へ腰掛けていると、目の前にいきなり人影が現れた。
それ自体は普段となんら変わりはないことなので気にもとめなかったが、なんだか今宵は嫌な匂いが鼻を掠めた気がした。
『……今日は随分遅かったのね。』
「あれ、もしかして寝ないで待っていてくれたのかい？嬉しいなぁ。」
『別に、寝たくないだけよ。』
それに、どうせ起こすんでしょう？とため息混じりに返せば、彼は「ははは」と苦笑いを浮かべた。
やはり、起こすつもりだったらしい。
して、私が問いたいのはなぜこんなにも遅かったのかなんていうくだらないことではない。
『それより……あなたが来てから、ずっと気持ちが悪い匂いがするのだけれど。』
鉄が錆びたような、生臭い匂い。これは死臭だ。嗅ぐだけで気分が悪くなってくる。
それに、よく見ると彼の服には赤いものが所々に付着しているではないか。
『道草を喰うくらいなら、とっとと私を喰らってくれないかしら。』
「Aのことはまだ喰えないよ。それに、鬼が人を喰うのは定めのようなものだろう？」
『せめて湯浴みくらいしてから来てちょうだい。その匂いは、あまり好きじゃないの。』
私は鼻を手で軽く覆ったまま、縁側から立ち上がる。そしてぼけーと突っ立っていた彼の手を引いて、半ば強引に屋敷の中に連れ込んだ。
しばらく無言のまま、だだっ広い屋敷の廊下を歩いた後、着いたのは風呂。
「もしかして、Aが流してくれるのかな？」
『流しません。』
そのまま彼を追いやり、戸を閉める。本当に、どこまでも都合が良い鬼だ。
『匂いが落ちるまで、ちゃんと湯に浸かってちょうだい。着物も、替えを置いておくわ。』
「あぁ、わかったよ。」
彼の声を聞き、私は風呂を後にする。
匂いの元凶から離れたというのに、私の鼻はまだあの気味が悪い匂いをしっかり覚えてる。
そしてどこかで、自ら匂いを探している気がして、
ほんの少し、目眩がした。
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あるでんと(プロフ) - ぱんさん» コメントありがとうございます。そう言ってもらえて嬉しいです。風邪は年末から年始にかけてすでにひいたので大丈夫だと思います笑 (2020年1月15日 23時) (
レス) id: 484fc6b4f6 (このIDを非表示/違反報告)
ぱん - とても面白いです！続きを楽しみにしてますが、すんごい寒いので体調に気をつけてくださいね！ (2020年1月14日 17時) (レス) id: 03bfdf54f9 (このIDを非表示/違反報告)
あるでんと(プロフ) - あさん» 童磨のキャラブレがとても心配だったので、そう言っていただけて嬉しい限りです。完結までは私のペースになってしまうと思うのですが頑張ろうと思っているので、これからもぜひ、よろしくお願いします。 (2019年10月27日 7時) (レス) id: ee9413cc7b (このIDを非表示/違反報告)
あるでんと(プロフ) - 狂狐さん» 返信遅れて申し訳ありません。勿体ないお言葉、本当にありがとうございます。とても嬉しいです。少しずつ更新していこうと思っているので、これからもよろしくお願いします。 (2019年10月27日 7時) (レス) id: ee9413cc7b (このIDを非表示/違反報告)
あ - 童磨さん最高です。すごく面白かったです、これからも応援させていただきます。 (2019年10月24日 17時) (レス) id: 87b58a18e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あるでんと | 作成日時：2019年7月20日 15時
