拾壱 ページ12
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遠い日の夢を見た。
目の前で、ある鬼が泣いていたあの日の夢を。
『ん……ここは…屋敷？』
「あ、気が付いたかいA。」
重たい瞼を開くと、そこに広がっていたのは見覚えのある天井。それはやがて、見覚えのある顔へと変わった。
ひょこっと私の顔を覗き込んだのは紛れもない
なぜ私は布団に寝転んでいるのか、またなぜ外からうるさいほどに虫の声が聞こえてくるのか。
途切れた私の記憶は、全く役に立たない。
『私は……どのくらい寝ていたの？』
「街にいる時に倒れたからね。今はもう丑三つだ。」
『……ごめんなさい、迷惑をかけたわね。』
「君が大丈夫なら俺は構わないよ。しかし、なんの前触れも無かったから驚いたなぁ。」
そう言うと、彼は骨ばった手を私の頬に添える。
親指の腹で撫でられる柔らかい感覚に、不思議と心が落ち着いた。
相手は
「……おっと、起き上がれるのかい？」
『えぇ……だいぶ楽になったわ。』
身を起こし、一呼吸置くとまだ少し視界が揺れていたのも少しだけ楽になった。
「まだ顔色が良くない。あまり無理は駄目だ。」
『色が白いのはいつもの事よ。』
「いつもはもっと、齧り付いてしまいたくなるような唇の色をしているけどね。」
彼はそう言うと、先程まで頬に添えていた手を私の唇へと移す。
ゆっくりと、その感触を確かめるように下唇を撫でる。
私に腕を近づけることにより、自然と近くなった彼の顔。虫の声が止んだ時、じっと目と目が逢った。
『……あなたは綺麗な瞳をしているのね。羨ましい。』
「俺は君のどこまでも深く青い瞳の方がいいと思うよ。」
『こんな瞳、不気味がられるだけよ。』
「やっぱり、人間達は可笑しいね。」
私の唇を撫でていた彼の手が離れる。
それと同時に、私は彼から顔を逸らすように視線を落とした。
ただ、なんとなく。
このまま彼の瞳を見つめていたら、後戻りが出来なくなるような。
そんな気がしたから。
『……今日はもう休むわ。』
「そうだね、じゃあ俺も帰ろう。連れ回して悪かったね。」
私が次に彼の方を向いた時にはもう、そこに姿は無く、代わりにあったのは、美しく蝶が彫られたつげの櫛。
『……馬鹿ね。』
ぽろりと零れた呟きは、再び鳴き出した虫の声にかき消された。
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あるでんと(プロフ) - ぱんさん» コメントありがとうございます。そう言ってもらえて嬉しいです。風邪は年末から年始にかけてすでにひいたので大丈夫だと思います笑 (2020年1月15日 23時) (
レス) id: 484fc6b4f6 (このIDを非表示/違反報告)
ぱん - とても面白いです！続きを楽しみにしてますが、すんごい寒いので体調に気をつけてくださいね！ (2020年1月14日 17時) (レス) id: 03bfdf54f9 (このIDを非表示/違反報告)
あるでんと(プロフ) - あさん» 童磨のキャラブレがとても心配だったので、そう言っていただけて嬉しい限りです。完結までは私のペースになってしまうと思うのですが頑張ろうと思っているので、これからもぜひ、よろしくお願いします。 (2019年10月27日 7時) (レス) id: ee9413cc7b (このIDを非表示/違反報告)
あるでんと(プロフ) - 狂狐さん» 返信遅れて申し訳ありません。勿体ないお言葉、本当にありがとうございます。とても嬉しいです。少しずつ更新していこうと思っているので、これからもよろしくお願いします。 (2019年10月27日 7時) (レス) id: ee9413cc7b (このIDを非表示/違反報告)
あ - 童磨さん最高です。すごく面白かったです、これからも応援させていただきます。 (2019年10月24日 17時) (レス) id: 87b58a18e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あるでんと | 作成日時：2019年7月20日 15時
