拾陸 ページ17
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鬼は私に、嫌悪のような、はたまた憐れむような、見下すような。そんな目で睨み続ける。
しかしどこかでその無慈悲な瞳を、見たことがある気がしたのはきっと気の所為だろう。
『……貴方は、母を知っているのですか。』
「あぁ、良く知っている。白い髪に白い肌。お前にとても似ている女。」
父はとても艶やかな黒髪だった。生まれてから母に会ったことのなかった私は、なぜ白い髪をしているのかずっと知りたかった。
父は母のことを話してくれなかったから、勝手に思い浮かべていたが、やはり私は母に似ていたのか。
父に似たところはきっと、この深く青い瞳だけ。
「音次郎は実に美しく、聡明な男だった。だがあの女に誑かされてから、奴はつまらない男に成り下がったのだ。」
あの女とは、きっと母のこと。この鬼はやはり、何か私の知らないことを知っているのだろう。
けれど、この先に踏み込めばきっと、私は死ぬ。
彼が私を喰らってくれるのを待つこと無く、永遠の眠りに堕ちることだろう。
それほどに、この鬼はタチが悪い。そして、何かが違う。
簡単に、一言で言うならばそう。
この鬼は、
「……お前も哀れだ。顔も知らぬ母のせいで、お前はその母と同じ運命を遂げるのだから。」
『同じ運命？』
「そうだ。お前は私から逃げられない……Aよ。」
『私の、名……。』
「……私は何でも知っている。」
頬を少しだけつり上げ妖しい笑みを浮かべると、鬼は唐突に庭へと足を動かし始める。
帰るというのだろうか。だが、刀はどうする。探してもいなければ、手に入れてもいないのに。
この家にある事がわかっているのなら、なぜ探さないの。
ザッと、庭の土を踏む音が聞こた時、その鬼はまたこちらを向き、その赤い瞳で私を真っ直ぐ見据えた。
「いくら願っても、お前の運命は変わらない。」
『だから運命って……』
「……次に私と会う時。それがお前の最後となるだろう。」
どこから聞こえてきたのは、古風な琵琶を弾く音。
『……待って！』
その音に手を伸ばした次の瞬間、その男は現れた襖の奥へと消えていた。
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あるでんと(プロフ) - ぱんさん» コメントありがとうございます。そう言ってもらえて嬉しいです。風邪は年末から年始にかけてすでにひいたので大丈夫だと思います笑 (2020年1月15日 23時) (
レス) id: 484fc6b4f6 (このIDを非表示/違反報告)
ぱん - とても面白いです！続きを楽しみにしてますが、すんごい寒いので体調に気をつけてくださいね！ (2020年1月14日 17時) (レス) id: 03bfdf54f9 (このIDを非表示/違反報告)
あるでんと(プロフ) - あさん» 童磨のキャラブレがとても心配だったので、そう言っていただけて嬉しい限りです。完結までは私のペースになってしまうと思うのですが頑張ろうと思っているので、これからもぜひ、よろしくお願いします。 (2019年10月27日 7時) (レス) id: ee9413cc7b (このIDを非表示/違反報告)
あるでんと(プロフ) - 狂狐さん» 返信遅れて申し訳ありません。勿体ないお言葉、本当にありがとうございます。とても嬉しいです。少しずつ更新していこうと思っているので、これからもよろしくお願いします。 (2019年10月27日 7時) (レス) id: ee9413cc7b (このIDを非表示/違反報告)
あ - 童磨さん最高です。すごく面白かったです、これからも応援させていただきます。 (2019年10月24日 17時) (レス) id: 87b58a18e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あるでんと | 作成日時：2019年7月20日 15時
