しずむアストロ【イナGO】１ (ページ5)

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こうして私は、木枯らし荘の住人となった。たまたま空いていた2階の一部屋を使わせてもらえることになったのだ。

部屋のベッドに腰かける。
あれから話しているうちに夕食の時間になってしまった。部屋にリュックを置いて早速料理の手伝いをしようとキッチンに向かうも「Aちゃん、今日はもう疲れたでしょう？ご飯ができたら呼びに行くから部屋で休んでいてね」と優しく秋さん(自己紹介してもらった)に追い返されてしまった。

ようやく落ち着いてきた頭で状況を整理する。

私は事故で命を落としたがなぜかまだ生きていて、イナズマイレブンGOの世界に来てしまった。そして、どういうわけか天馬くんたちと同じ中学校に転校することが決まっている。学生証や書類などもほぼ調えられているということは、手続きに必須であろう戸籍が、この世界のよそ者の私にはあるということだ。

まるで、私がこの世界の一員だと辻褄を合わせるように事が進んでいる。
その一方で、命を落とす直前まで一緒だった弟の姿はどこにもない。

「…。」

静かな部屋に扉をノックする音が響いた。

「Aー！夜ご飯できたよ。秋ネエが呼んできなさいって」
「うん、すぐ行くね」

秋さんと天馬くんと3人で食べる夕食は、とてもおいしくて温かかった。弟以外の人と食卓を囲むのはいつぶりだろう。夢中で箸を進める天馬くんと、それを嬉しそうに眺める秋さんの姿をみて心が和む。天馬くんがご飯を飲み込んで「そういえば、」と切り出した。

「Aは明日はどうするの？」
「明日はまだ予定はないんだ。どうしようかなって思ってる」
「それならさ！サッカー部の練習見にこない？」

天馬くんの目が嬉しそうにキラキラ輝いている。秋さんが「こら、Aちゃんはまだ疲れてるのよ。明日はのんびりしていた方がいいんじゃない？」と諭すと、輝いていた目が少しシュンと伏せられた。それがなんだか可愛らしくて思わず口元が緩んでしまう。

「天馬くんはサッカー部に入ってるんだよね」
「うん！俺サッカーが大好きなんだ！」
「ふふ…そうなんだ。私、天馬くんのプレイ見てみたいな」
「ほんとっ？午後から部活始まるんだ！サッカー部のみんなのことも紹介したいなあ」
「うん、楽しみにしてるね。あ、でもサッカー部がどこで練習してるのか分からないや」

心配した秋さんが一緒に着いて行ってくれることになった。無理はしちゃだめよ、と気遣ってくれる。本当にどこまでも優しい人だ。