しずむアストロ【イナGO】１ (ページ29)

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「穏やかな昼休み」ページ29

「ふあ」

眠気に耐えられず、私は箸をおき大きくあくびをした。昼休みの屋上にそよ風がやさしく吹き抜けて、心地よさからまたうとりとしてしまう。

「く…ふふ、でっかいあくび」
「う、見られた」
「そりゃ見るだろ、昼飯中まで寝てるんだから。ちゃんと家で寝れてるか？」

苦笑いしながらも心配してくれている霧野くんに、寝てるんだけどなあ…とぼやいた。

この世界に来てから、私の体にはいろいろな異変が起きるようになった。
めまいや頭痛、そして強い眠気。
次元を一つ飛び越えた影響かもしれないな、と思っているけれど、詳しいことは分からないままだ。

ん？昼飯中『まで』？

「…霧野くんもしかして見てた？」
「ああ。さっきの授業、爆睡してたな。気持ちよさそうに」

霧野くんは、イッといたずらっぽく笑う。
同級生に気の抜けた寝顔を見られた恥ずかしさでカッと顔が熱くなる。

「霧野くん、私の前の席なのに…いつ見たの」
「プリント回すときに見えたんだ。神童もちょっと笑ってた」
「２人に見られたのかあ…」
「俺たちだけじゃないぞ。周りの席のやつらは皆暁のこと見守ってた」
「わあ…」
「優しさに感謝だなー」
「ありがとうでもそこは起こしてくださいな」

大勢に見守られていた(笑)恥ずかしさで全身が熱くなる。やられっぱなしでは悔しいので、私はささやかな反撃に出ることにした。

「…私も見てしまいました」
「え。何を」
「その前の授業で、思いっきり早弁してたよね」

どうだ。

「あー見られてたか」

効かなかった。霧野くん、あっけらかんとしている。

「もっと驚くと思ったのに…」
「隠す気ないからな、霧野は」

神童くんがお弁当袋を持って階段を上がってきた。霧野くんが『委員会おつかれー』と実質２個目のお弁当を頬張りながら声をかけた。それにしても、すごい量と食べっぷりだ。

「霧野くん、いっぱい食べるねえ」
「だって腹減るだろ」
「堂々と早弁してるのに、先生には見つからないんだから不思議だよな」

神童くんは関心するように霧野くんを見やりながら、持っていた袋からお弁当箱を出す。
その大きさに思わず「わ、」と声が出た。

「神童くんのお弁当も大きいね」
「そうか？いつもと同じなんだが」

サッカー部のやつらはもっと食うぞ、と神童くんは笑った。確かに、天馬くんも朝ごはんに朝練終わりのおにぎりに購買のパンまで食べていた気がする…。それもぺろりと。

男の子の胃袋、恐るべし。