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翌日の午後練習の時間、私は一人ミーティングルームでパソコンとにらめっこをしていた。昨日の話し合いで皆が選んだ写真をもとにポスターのレイアウトを作成中なのだ。
「うーん、難しい…」
またうんうん唸る。授業で少しパソコンを使ったことがあるだけの私には、本格的な編集作業はかなり難易度高めだ。音無先生が丁寧にアドバイスをしてくれたけど、教師や顧問の仕事で忙しい彼女にずっとついていてもらうわけにはいかない。
すると、自動ドアが開く。そこに茜ちゃんが一人で入ってきた。
「Aちゃん、おつかれ」
「茜ちゃんもおつかれさま。葵ちゃんと水鳥ちゃんは?」
「二人はマネージャーのお仕事中。少しぬけてきた」
「様子を見にきてくれたの?」
私が苦戦しているのかもしれないと、気にかけてくれたのかな。嬉しくって「ありがとう」と言うと、茜ちゃんはにこりと笑った。
「葵ちゃんと水鳥ちゃんにも、お礼を言わなきゃだ」
「ふたり、ほんとに頑張ってた」
皆の意見をうまくまとめてくれたのは二人だった。あまり興味のない部員も話し合いに参加するよう説得し、意見を引き出してくれたのだ。「倉間ァ!部外者みたいな面してないでお前も手ぇあげんだよ!」「狩屋くん!どの写真にも手あげなかったらマムシドリンクだからね」と、かなり熱が入っていた(もう脅しに近かった)。
「剣城くんなんか、一人だけすごい後ろで見てたもんね」
「意外とさぼり魔なの」
葵ちゃんが前の席まで引っ張ってきて意見を言わせていた。もはや意地だ。
「よしっ、がんばるぞ」
茜ちゃんはかっこいい写真を提供してくれて、葵ちゃんと水鳥ちゃんが意見をまとめてくれた。
今度は私が頑張る番だ。
「いいものつくりたいもんね」
夢中になりすぎて、茜ちゃんが私にカメラを向けているのにも気づかなかった。
「で、できた…!」
少し離れた場所に座っていた茜ちゃん。立ち上がりパソコンを覗き込むと、キラキラと目を輝かせた。
「…とってもイイ。Aちゃん、すごい」
「へへ、やったあ」
葵ちゃんたちにも見せよう、言いかけたところに彼女はカメラの画面を見せつけてきた。
そこには、パソコンに向かう私がドアップで映っている。
「えっ」
「Aちゃんの表情、すごくよかった」
茜ちゃんは満面の笑みを浮かべ満足そうだ。
「え、は、はずかしい。消してくれたりはしませんか」
「ふふ。むり」
「そっかあ…むりかあ…」
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作者名:飯 | 作成日時:2021年9月2日 22時