Assortment (HIGH ＆ LOW) (ページ4)

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お題SS 佐智雄後編ページ4

佐智雄の言葉に、頷き階段を登っていく。
山の上にあるこの神社。両脇に植えられた木々は少しずつ色付き始めていた。背中を見ながら階段を登ること、5分。
目の前には最後の階段。登り始めた時よりも増えた彼との距離。私よりも先に登りきった彼。振り返り待ってくれている。最後の1段という時に差し出された手。その表情は、逆光でよくわからない。右手を伸ばすと、力強く握り返してくれた。
登りきった先には、誰もいない神社。小さい頃よく来ていたそうだ。2人でお参りをしてから見晴台へ。フェンスの向こうに見える街並みを並んでしばらく見ていた。その沈黙を破ったのは、彼の声。

「A、待たせてごめんな」

この言葉の意味がわからないでいると、ゆっくり話を続けた。

「もう、隠さなくていい。不自由な思いさせてごめん」

「そんなことない。私も佐智雄の弱みにはなりたくなかったから……」

泣きたくないのに止まらない涙。手で拭っても止まらない。

「無理に止めなくていい。これからは俺に隠れて1人で泣くな」

背中に感じる手の温もり。私は彼に抱きしめられていた。彼の胸に顔をうずめて泣いた。その間ずっと、優しく背中をさすったり、頭を撫でたりしてくれた。
涙が止まった頃には、空がオレンジ色から濃紺へと変わり始めていた。

「やっと泣き止んだ」

苦笑いしながら佐智雄が言う。

「ごめんね」

「気にすんな、泣かせたのは俺だからな。もう一度、ここからはじめよう」

お題

もう一度、ここからはじめよう