Assortment (HIGH ＆ LOW) (ページ11)

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幸せな空間佐智雄ページ11

もしもこの世に神様という存在があるのならば、私はなぜ今なのかと恨む。付き合って何度か迎えているが、クリスマスというのはとってもロマンチックなイベントだ。なかなかそういうイベントに乗り気でない佐智雄を説得してデートするはずだったのに……なんで高熱を出したんだ、私は。

「……ごめん」

「まだ言ってんのか？しかたねぇだろ、熱出たんじゃ」

ベッドサイドで小説を読んでいる佐智雄に何回目かのごめんを言う。
好きで熱を出した訳じゃないが、何故このタイミングなんだと言うなんとも言えない思いが自分の中で消化しきれないのだ。

「だって楽しみにしてたんだもん……」

「体調が良くならねぇことには楽しめねぇだろうが。治ったら好きなところ連れてってやるよ」

グダグダ言っていたから、読んでいた小説を床に置いて寝ている私を見てそう言った佐智雄。顔に向かって伸びてきた佐智雄の手。頭なでなでしてもらえるかなと思っていたら、いきなり鼻を摘んできた。何がおかしいのかわからないけどクスッと笑ってる。ひと笑いした後につまんでいた手を離し、なでなでしてくれた。優しく撫でられるのは気持ちよくて好きだ。

「佐智雄、ありがとう」

「少し寝てろ、そばにいてやるから」

そう言って布団をかけ直してくれたあと、ベッドにもたれかかって床に置いていた小説を再び読み始めた。何かを言うでは無く、ただ静かな部屋の中。時々佐智雄がページをめくる音が聞こえた。何かをしているわけじゃないが、今そばに佐智雄がいてくれるので安心して眠れそうだ。